概要
高圧遮断器とは、キュービクルなどの高圧受電設備に用いられる電気機器であり、主に短絡電流や過電流などの大電流を遮断するために使用します。
高圧受電設備には断路器やPASなどの開閉装置がありますが、断路器は充電されている回路、PASは負荷電流までしかそれぞれ遮断(消弧)することが出来ません。
※断路器とPASについては以下の記事をご参考ください。
短絡電流は数kAクラスの大電流が流れるため、「開閉能力が非常に高い」ということが重要であり、これを主に解決するのが高圧遮断器です。
高圧遮断器は低圧で言うならばブレーカーにあたる機器で、短絡電流のような大電流を遮断することが可能です。
高圧用のヒューズ(限流ヒューズ)も同じく短絡電流を遮断できますが、エレメントが溶断する以上、動作後に交換が必要であり、組み合わせて使用するLBSもそれほど多くの開閉回数をこなすことが出来ません。
※限流ヒューズ、LBSについては以下の記事をご参考ください。
高圧遮断器は電流の消弧能力が高いだけでなく、開閉寿命も高く、さらに継電器と組み合わせることで動作特性をカスタマイズすることもできるため、高価ですが大変使い勝手が良いと言えます。
高圧遮断器の種類
短絡電流などの大電流を遮断できる高圧遮断器ですが、大きく5つの種類に分けられます。
真空遮断器(VCB)
真空バルブと呼ばれる磁器やガラス製の真空容器内に、電流の経路である接触子を封入しているタイプの高圧遮断器です。
真空は拡散作用が大きく、遮断時に発生するアークを消滅させることが可能です。真空はまた介在物がほぼ存在しないため絶縁性能が高く、極間が小さく済み、高頻度開閉にも寄与しています。
経済性や消弧能力の高さから、高圧受変電設備で汎用的に用いられます。(冒頭イラストもこのタイプがモデルです)
油遮断器(OCB)
接触子を内蔵した容器内に、絶縁油を入れたタイプの高圧遮断器。
遮断時のアークで油が分解されて水素ガスが発生し、この水素ガスの冷却作用によって消弧します。
絶縁油を使用しているため、定期的な油の管理が必要となり、近年はあまり使用されません。
磁気遮断器(MBB)
アークを電磁力により引き延ばし、アークシュート内に押し込んで冷却作用、及び壁面による消イオン作用により消弧する方式。
絶縁油を使用しない事や接点の摩耗が少ない事が利点ですが、近年は真空遮断器の方が採用されやすい傾向にあります。
空気遮断器(ABB)
高速の空気を吹き付けて遮断する方式。
空気の断熱膨張によってアークが冷却され、消弧されます。ただ消弧に使用された空気は大気に放出されるため、遮断動作時はかなりの騒音が出ます。また圧縮空気を作り出すコンプレッサや空気タンクが付属されています。
現在ではガス遮断器への移行が多いですが、今でも現役で活躍しているモデルです。
ガス遮断器(GCB)
SF6ガス(六フッ化硫黄ガス)をアークに吹き付けて消弧する方式。
空気遮断器と同じ原理ですが、SF6ガスは空気よりも絶縁性能・消弧能力が優れているため、機器の小型化に貢献しています。また遮断に使用したガスを大気に放出することもなく、騒音があまり発生しません。
主に特別高圧受変電設備などで採用されるケースが多いです。
高圧遮断器の引き外し方式
高圧遮断器は高圧回路の遮断に用いられますが、これは保護継電器との組み合わせによってなされます。
保護継電器が事故を検出し、引き外し指令によりトリップコイルに電流が流れ、遮断器を引き外すといったイメージです。
この引き外しの方式には、主に四つのタイプが存在します。図面を参照しながら見ていきましょう。
過電流引き外し方式
変流器(CT)の二次電流を、直接トリップコイル(TC)に流し、遮断器を引き外す方式です。
赤線が検知およびトリップ用の電源回路で、このように特別な電源を用いない簡便な方式であるため、高圧受電設備で一般的に使用されています。ただし他の方式に比べ、信頼性は低いです。
電圧引き外し方式
トリップコイル(TC)に電圧を印加して引き外す方式です。
赤線が事故検知用の回路で、青線はトリップコイル用の電源回路にあたります。別途制御電源を用意していることから、信頼性は高いと言えます。
コンデンサ引き外し方式
コンデンサの放電エネルギーによって引き外す方式です。
赤線が検知回路、青線がコンデンサの電源回路にあたります。専用の制御電源を使用するため、信頼性は高いです。
不足電圧引き外し方式
あらかじめ引き外し装置に電圧を印加し、回路電圧が低下を検出して引き外す方式です。
赤線が事故電流の検知回路、青線が電源回路、緑線が不足電圧の検知回路にあたります。停電時において遮断したい時などに使用し、そのため制御電源を別に設ける必要があります。
まとめ
- 高圧遮断器は短絡電流などの大電流を遮断できる電気機器。
- 真空遮断器(VCB)、空気遮断器(ABB)、ガス遮断器(GCB)などの種類がある。
- 保護継電器と組み合わせて使用し、その引き外し方式もいくつか存在する。
参考文献・サイト
- 田沼和夫『大写解 高圧受電設備: 施設標準と構成機材の基本解説』オーム社,2017年
- 技術系資格試験合格ガイド『電気を遮断する遮断器の種類や役割とは?どんなときに必要になるの?』 https://www.gijutsushikaku-guide.net/electrical-circuit-breaker
- 電気設備の知識と技術『断路器・負荷開閉器・遮断器の特性と選定方法』 https://electric-facilities.jp/denki8/kouatsu2.html
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