概要
断路器とはDS(ディスコン)などと呼称され、負荷電流が流れていない、充電されているだけの回路を開閉するための装置になります。
高圧受電設備は年に一度点検のため停電作業を行いますが、そのような際に回路を確実に切り離し、安全を確実なものとするために断路器は使用されます。
基本的に真空遮断器などの高圧遮断器の直近上位に設置され、遮断器自体の点検や交換が必要な際にも断路器によって回路の切り離しを行います。
ちなみに断路器の開閉操作は操作用フック棒(通称ディスコン棒)と呼ばれる棒を、本体のフック穴に引っ掛け、引き抜くことで開放、逆に奥側へ突っ込むことで投入されます。
断路器の役割
断路器の役割について説明します。
先に述べた通り、断路器は負荷電流が流れていない状態で上位側、下位側の回路を切り離し、点検作業・工事などを行う際に使用されます。
イメージとしては下のようなイラストになります。
ただ単に通電(充電されているだけ)の時、断路器は開放操作を行うことが出来るんですね。
負荷電流を開放することは出来ません!!(これはまだ次項で述べます)
とはいえ実際のキュービクルや受電所において、電源側はPASなど責任分界点にも開閉器が存在し、年次点検の際にはそこも普通は開放されているため、多くの場合は無電圧状態で開放することの方が多いと思います。
負荷電流が流れていなければ開放できると分かっていても、操作するフック棒の先に6600Vなど高圧の活線が存在しているというのは、かなり不安全と言えるかもしれません。
※ちなみにPASについては以下の記事をご参考ください。
断路器の禁止事項
断路器の禁止事項について述べていきます。
ここまで何度か触れた通り、断路器はあくまでも充電しているだけの回路を開閉することしか出来ません。つまり、電流遮断能力は持ち合わせていないのです。
負荷電流が流れている状態において開放操作を行うと、大事故に繋がる危険があります。
イラストだけでなく実物を見れば分かりますが、断路器は開閉の接点が剥き出しで、アークを消弧させる機能等は存在しません。
※アーク放電とは
電弧放電(でんこほうでん)、または、アーク放電(英: electric arc 英語発音: [iˈlektrik ɑːrk])は、電極に電位差が生じることにより、電極間にある気体に持続的に発生する絶縁破壊(放電)の一種。負極・正極間の気体分子が電離しイオン化が起こり、プラズマを生み出しその中を電流が流れる。結果的に、普段は伝導性のない気体中を電流が流れることになる。この途中の空間では気体が励起状態になり高温と閃光を伴う。
(wikipediaより引用 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%BC%A7)
負荷電流が流れている状態で断路器を開けば、短絡事故の発生、アークによる人身災害など、事業継続が困難になるばかりか、社会的責任や人命にまで関わる大問題となってしまいます。
電流が流れている際、断路器の開放操作は行う事は電気屋のタブーです。
これを防ぐためには正しい知識を身に着け、さらに適切な対策を講じることが重要となります。
断路器操作における安全対策
「負荷電流が流れている際に断路器を開放すること」の危険性について述べましたが、次はそれを防ぐための方策について見ていきましょう。
ここでは三つほど挙げていきます。
- 遮断器のインターロックを設ける
- PASを設け、出来るだけPASを開放してから作業を行う
- アクリル板などの保護を設ける
順に見ていきましょう。
①遮断器のインターロックを設ける
断路器の操作時のアーク発生は、負荷電流が流れている時に起きます。
そのため断路器二次側の遮断器がOFFになってさえいれば、安全に断路器を開放できるということになります。
よって遮断器とのインターロックを設けることで物理的に操作を禁じ、アーク事故の発生を防ぐというのがこの対策になります。
②PASを設け、出来るだけPASを開放してから作業を行う
極力、断路器を活線状態で操作しないようにすれば、事故の発生を防ぐことが出来ます。
PASを設ければ無電圧状態に出来るため、より安全な状態で開閉操作を行う事が可能となります。
③アクリル板などの保護を設ける
万一断路器操作を行ってしまい、アークが発生した際にはアクリル板などの保護が活躍します。
完全にアークを防げるわけではありませんが、アクリル板越しであれば作業者が被災する割合が低減できます。
以上三つが断路器操作における安全対策になります。
そのほか断路器の開放操作は 遮断器⇒PAS⇒断路器
といった開閉能力が高い順に順序で操作すると心がけるとより安全です。(投入はこの逆)
停電作業時の作業接地取付
ここまで断路器について解説しましたが、停電時の作業接地作業も断路器と関連があるため述べていきます。
労働安全衛生規則第339条には、高圧回路の停電作業時について以下のように記しています。
第三節 停電作業
(停電作業を行なう場合の措置)
第三百三十九条 事業者は、電路を開路して、当該電路又はその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業を行なうときは、当該電路を開路した後に、当該電路について、次に定める措置を講じなければならない。当該電路に近接する電路若しくはその支持物の敷設、点検、修理、塗装等の電気工事の作業又は当該電路に近接する工作物(電路の支持物を除く。以下この章において同じ。)の建設、解体、点検、修理、塗装等の作業を行なう場合も同様とする。一 開路に用いた開閉器に、作業中、施錠し、若しくは通電禁止に関する所要事項を表示し、又は監視人を置くこと。
二 開路した電路が電力ケーブル、電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものについては、安全な方法により当該残留電荷を確実に放電させること。
三 開路した電路が高圧又は特別高圧であつたものについては、検電器具により停電を確認し、かつ、誤通電、他の電路との混触又は他の電路からの誘導による感電の危険を防止するため、短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること。
2 事業者は、前項の作業中又は作業を終了した場合において、開路した電路に通電しようとするときは、あらかじめ、当該作業に従事する労働者について感電の危険が生ずるおそれのないこと及び短絡接地器具を取りはずしたことを確認した後でなければ、行なつてはならない。
引用:JISHA中央労働災害防止協会 安全衛生情報センターHP https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-2h5-0.htm
上記のように停電作業などを行う場合、作業者の安全を確保するため、高圧回路上に短絡接地を施す必要があり、多くの場合これは断路器の電源側に対して行われます。
イラストのようなイメージになり、接地中は何らかの表示を施すことが推奨されます。
ただしLBSで構成されるPF・S形はこの限りではありません。
このように短絡接地を施しておけば、上位側で誤って通電してしまった場合や、他の高圧回路との混触、もしくは誘導による感電事故を防ぐことが出来ます。
作業の意味や断路器の役割について理解しておけば、より安全な作業が行えますね。
まとめ
- 断路器は点検時、回路を切り離すために用いる装置である。
- 断路器は負荷電流は開閉できない。
- アーク事故を防ぐため、様々な対策が存在する。
参考文献・サイト
- 田沼和夫『大写解 高圧受電設備: 施設標準と構成機材の基本解説』オーム社,2017年
- 三菱電機『断路器』 https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/mvd/mvsw/pmerit/discon/index.html
- JISHA中央労働災害防止協会 安全衛生情報センターHP https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-2h5-0.htm
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