概要
過電流継電器とは、電線や電気機器への過負荷や短絡を遮断するために使用される保護装置です。
OCR (Over Current Relay)とも表記し、誘導円板形と静止形の2種類に大別され、計器用変流器(CT)やVCBなど高圧遮断器と組み合わせて使用されます。
イラストは簡略化していますが、高圧回路の一般的な構成を示しています。電力会社から受電した電力(6600Vなど)は需要家側の変圧器によって100V、200Vなどの低圧へと降圧され、モーターなどの負荷へと接続されているのが分かると思います。
過電流継電器は過負荷・短絡時に高圧遮断器へと命令を送ることで、構内への電力供給をストップし、事故系統を切り離すのが主な役割です。
特にこの動作命令の特性を多用にカスタマイズできるというのが、最大の特徴です。
過電流継電器の動作について
過電流継電器は先に述べたように、構内での過負荷・短絡時に高圧遮断器を動作させます。
動作順序についてイラストを参考に見ていきましょう。
①構内で過負荷・短絡事故が起こる
特に説明はいらないかもしれませんが、まず構内で過電流・短絡電流が発生します。
このままでは過大な電流が流れ続け、配線や電気機器が焼損し、電気火災事故へと発展します。あるいは電力会社側の遮断器が動作し、周辺一帯が停電するといった波及事故も考えられます。
②過電流継電器が異常を検知
過電流・短絡電流は計器用変流器(CT)を通して継電器が知るところとなります。
ちなみに変流器は200/5A、100/5Aなど変流比が決まっているため、あらかじめ継電器側では変流比に応じたCT値を設定しておくことが基本です。
③過電流継電器が遮断命令を出力
過電流継電器は限時要素、瞬時要素などさまざまな機能が存在し、複数の設定値を変える事で動作特性を変更できます。
検知した電流が特性曲線以上だった場合、継電器は動作を開始します。
この動作特性の決定は上位側と下位側の機器との保護協調がとれていることが重要です。
※保護協調とは
事故発生時に事故回路の遮断器やヒューズのみが動作し、事故回路を電源より切り離すことで、他の回路には給電を継続できるよう調整することを指します。
例えば需要家の継電器が5秒で動作するのに対し、電力会社側の継電器が4秒で作動するなどといった事態になれば、これは協調不良と言えます。
④遮断器が動作し、事故回路を切り離す
過電流継電器の動作命令に従い、高圧遮断器が電流を遮断します。
こうすることで事故系統が切り離され、電気機器焼損による電気火災事故の防止、健全回路への電力供給の継続が可能となります。
このように過電流継電器は、過負荷・短絡時における重要な働きを担っているのです。
※詳しい動作については、以下【高圧遮断器】の記事をご参照ください。
過電流継電器の動作特性
過電流継電器には大きく分けて限時要素、瞬時要素という二通りの特性が存在します。
この二つの特性を組み合わせることで、過電流と短絡電流をそれぞれ遮断することが可能になります。イラストを見ていきましょう。
上記のグラフは過電流継電器の動作特性を、時間(t)と電流(A)で表現したものです。
限時要素
主に過電流を遮断する役割を担っている機能です。
イラストのように回路電流が低くなるほど、動作までの時間が長くなるような特性となります。
モーターなどの動力機器は始動時に通常の5~6倍の電流(始動電流)が流れるため、すぐに反応しないゆるやかなカーブを描くような特性が必要となります。
瞬時要素
主に短絡電流などの過大電流を遮断する役割を担っている機能です。
短絡電流は通常の何十倍もの電流が流れるため、配線や機器の保護観点からいち早く電流を遮断できるような特性が求められます。
そのため描かれる線は、イラストのように横一本に近いモノとなります。
上記二つの要素をカスタマイズし、事業場ごとに適した曲線とするのが理想です。
まとめ
- 過電流継電器は構内の過負荷・短絡時の遮断動作を担っている
- 変流器・高圧遮断器と組み合わせて使用する。
- 限時要素・瞬時要素を組み合わせて、動作特性を決定する。
参考文献・サイト
- 田沼 和夫『大写解 高圧受電設備: 施設標準と構成機材の基本解説』オーム社,2017年
- 三菱電機『配電制御機器技術講座 高圧機器と応用技術 継電器の選定と適用』 https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/learn/semi/school/haiden/tex_kou_ouyou_pdf/sy_9014f.pdf
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