概要
変圧器とは交流電圧を昇圧・降圧させる装置を指します。高圧受電設備においては6600Vを200Vや100Vに降圧させ、実際にモーターなどの動力機器や蛍光灯やLEDなどの電灯に用います。
昇圧および高圧は電磁誘導の原理に基づいて行われており、変圧器は励磁にかかる発熱をおさえる冷却方式により油入式・乾式に大分されます。
以下はこのうち、油入式についてまとめたイラストになります。
イラストは一部細かい部分を省略していますが、鉄心と巻線が絶縁油の中に浸かっている状態にあり、この油が絶縁と冷却を担っています。
油入式変圧器の特徴
- 価格が比較的安い(乾式と比べ)
- 設置条件が柔軟(湿度や粉塵に強い)
- 絶縁油の定期交換が必要(油の点検やメンテナンスが必須)
上記のように油入式は絶縁油の定期的な点検が必要となりますが、価格が安く、また湿度や粉塵に対する耐久性が高いため、高温多湿である日本では普及が進み、現在でも最も使用されている変圧器です。
※絶縁油の劣化診断については、別の記事でまとめる予定です。
変圧器の原理
変圧器の昇圧・降圧は電磁誘導の法則に基づいて行われています。
降圧する場合、一次巻線側にかかった電圧により磁束が発生し、その磁束が二次側巻線を貫通することによって二次側に電圧を起こします。
以下のイラストは、それを模式的に表したものになります。
この一連の変圧工程における一次側と二次側の電圧変換比は、一次側と二次側のコイルの巻線比によって決定されます。
一次側の電圧をV1、巻数をN1、二次側の電圧をV2、巻線をN2とすると
\[\frac{V1}{V2}\ = \frac{N1}{N2}\]
と表現されます。
このような原理によって高圧送電された電力は100V、200Vの低圧へと変圧されるのです。
励磁突入電流について
変圧器を実際に使用するにあたっては注意が必要で、その一つに励磁突入電流というものがあります。
変圧器へと電圧を印加する際、励磁突入電流(別名インフラッシュ電流)と呼ばれる過渡的に流れる大きな電流が発生します。
これは数秒ほどで定常状態へと移行しますが、通常の10倍近い電流が流れる場合があり、継電器やLBSの限流ヒューズが動作する危険があります。
年次点検などで停電している状態から変圧器に通電する時、継電器やヒューズが動作すれば、投入⇒即停電となるため大問題です。
そこで継電器の整定値やヒューズの選定時には、この事項を考慮しておく必要があります。
例えば変圧器の一次側にはLBSを設けるケースが多いですが、この際LBSに装着する限流ヒューズを通常のGではなく、変圧器保護用のTを選ぶなどがこれにあたります。
また変圧器を複数台所有している需要家では復電時、変圧器の投入を一斉にするのではなく、一台一台順次投入するなどして、全体にかかる励磁突入電流の影響を抑えるなどが対策として挙げられます。
このあたりについてはLBSの項目を見るとさらに理解が進むかもしれません。(特に励磁突入電流抑制型のLBSなど)
まとめ
- 変圧器は電圧を昇圧・降圧させる装置である。
- 電磁誘導の法則を利用しており、コイルの巻数比によって電圧比は決定される。
- 励磁突入電流について注意が必要である。
参考文献・サイト
- 田沼和夫『大写解 高圧受電設備: 施設標準と構成機材の基本解説』オーム社,2017年
- Technology Geeks『変圧器とは?原理や構造をわかりやすく解説』 https://www.daihen.co.jp/technologygeeks/cat01/cat01_01/29/
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