どうもプラ電マンです!
コロナの流行に加え、寒い季節にもなり、外で働くのがつらくなってきましたね。
最近はネガティブなニュースばかりですが、そんな中、
「福島の洋上風力発電が撤退! 600億の損失」
的な報道がされたと思いますが、皆さんご存知でしょうか?
再生可能エネルギーが、いけいけドンドン!、で増えたのは私も知っていましたし、近年は電力業界全体で電力の自由化とか、発送電分離とか、いろいろと動きがあったみたいですね。
そこで私は思ったのです。
そもそも日本の電力事情って、一体どうなってるんだ? と
ふだん電気に携わる仕事をしていながら大変恥ずかしいのですが、
最近のエネルギー事情について「私は完全に理解しているぞ」と言えませんでした(´;ω;`)
電気関係の仕事してるけど、もっぱら私は使う専門だからね。
しょうがないね(開き直り)
ツイッターでは結構話題に挙がってるみたいなのですが、電力会社に勤めたことないし、ぶっちゃけ詳しくは何のことだかよく分かりません。
でも知らないのは恥ずかしい(切実)
そういうわけで、私なりに調べてまとめようと思い、こうして記事にしました。
電力業界の変革について(前半)
電力業界は実は1990年代ごろから、電力の自由化という大きな目標に向けて動き出してみたいです。
電力自由化とは、電力会社によってほぼ独占状態だった電力事業に、他の企業をたくさん参入させることによって競争を生み出し、電力コストを削減することを狙って開始されました。
これまで電力事業は電力会社が一手に行っていたため、「殿様商売」と言われることもあったらしいですが、それを是正しようというのが電力の自由化なんですね。
この変革の歴史を知ることは、電力業界を知ることと同義です。
ちなみに経産省資源エネルギー庁では「電力の自由化は2000年3月スタート」と書かれていますが、それ以前にも少しずつ自由化に向けて歩き出していたみたいですよ。
順を追ってみていきましょう!
第1次:電力会社の電源調達に入札制導入(1995年)
変革の初手として、1995年に卸電力の入札制というものが導入されました。
これは簡単に言うと、電力会社以外の「発電事業を持つ会社」が、卸電力市場というものへ入札できるようになったというもの。いわゆる発電部門の自由化です。
電力会社とその他の発電事業者が、一定規模・一定期間以上の契約を結び、電力を電力会社へと供給できるようになったんです。
たくさんの企業が発電し、それを電力会社に売ろうと参加すれば、競争の原理によって、品質が良く、安価な電力が作られますからね。
これは電力会社にとっても、電気を利用する私達にもメリットがあると言えます。
ちなみにこの改革、10年以上で出力1,000kW以上、もしくは5年以上で10万kW以上の供給取引を行う義務があるため、発電事業者も利益を確保できる仕組みになっているゾ!
実際この改革には鉄鋼業界や石油業界などの価格競争力の高い事業者が応じ、一定の成果を収めました。この成功を踏まえ、その後は火力発電所の新設を全て入札制に切り替えることになりました。
というわけで、まずは発電部分を徐々に自由化させたということになります。
第2次:小売事業の一部自由化 特別高圧需要が対象(2000年)
変革の第2弾として、2000年に小売り事業の一部自由化がなされました。
これは「特別高圧」という電圧等級に分類される需要家を対象に、自由に契約先を決定し、電気を購入できるようになったというもの。
電圧区分は以下のように定義されています。
区分 | 交流 | 直流 |
低圧 | 600V 以下のもの | 750V 以下のもの |
高圧 | 600V をこえ 7,000V 以下のもの | 750V をこえ 7,000V以下のもの |
特別高圧 | 7,000V を超えるのもの | 7,000V を超えるのもの |
例えば大規模工場やデパート、オフィスビルなどが特別高圧には該当し、そういった大口の電気使用者が対象です。
大きい事業所は操業するために大量の電力を使用するため、契約先を変えて電力単価が1円でも下がることは、年間で見ると大変なメリットです。
まずは大きい所から段階的に自由化を始めたってことなんだね。
第3次~:小売事業の一部自由化 高圧需要が対象(2004、2005年)
さらに第3弾として、2004年・2005年に小売り事業の自由化範囲が拡大しました。
これはいわゆる「高圧」に分類される需要家 例えば中小規模工場や中小ビルなどが該当します。
電力量として先に500kW以上の需要家が対象となり、次に50kW以上の需要家といった順番で適用範囲が広がりました。
次は表の真ん中の電圧等級へと範囲が拡大したんですね。
区分 | 交流 | 直流 |
低圧 | 600V 以下のもの | 750V 以下のもの |
高圧 | 600V をこえ 7,000V 以下のもの | 750V をこえ 7,000V以下のもの |
特別高圧 | 7,000V を超えるのもの | 7,000V を超えるのもの |
だいたいここまでで全体の約60%くらいが自由化されたみたい。
このあと2008年に第4次の改革が行われ、この際自由化については「全面自由化は見送り、5年後再検討」という結果となりました。
ここまでは一般の人にはあまり関係ないですが、電力業界としては着実に電力の自由化を進めていったことが伺えますね。
しかしこの後、皆さんもご存じの、あの未曽有の災害が日本で起こってしまうのです。
東日本大震災の発生(2011年)
2011年3月、東日本大震災の発生によって、関東・東北地方を中心に日本は大きな被害を受けました。
この災害の際、東京電力が保有する海岸近くに設置されていた原発に津波が到達しました。
特に東京電力福島第1原発は非常用電源を含む「全電源喪失状態」に陥り、結果として統制を失った設備から放射性物質が飛散するまで至りました。
画像引用:https://saiyou.yomiuri.co.jp/special/special02.html
この出来事を経て、これまで安全だとされた発電システムへの信頼は失われ、原子力発電への風当たりは非常に厳しいものへと変わり、急速に脱原発が騒がれるようになりました。
震災の前後では、資源エネルギー庁のエネルギー経済白書の中身がガラリと変わっている。特に原発関係が顕著。
現在、資源エネルギー庁のサイトで閲覧できる広報パンフレットなどを見ると、原子力発電は電力の安定供給、二酸化炭素などの温室効果ガスの低減、電力コストの低減、という三項目を満たすために不可欠であるとされています。
とはいえ、2011年以降は原子力発電に対するハードルは高くなり、太陽光や風力発電などの新エネルギーにより注目が集まったのは事実でしょう。
実際原子力発電は原子力安全推進協会のHPによると2020年12月時点で、全33基中3基しか稼働していません。
電力業界の変革(後半)
東日本大震災によって日本のエネルギー情勢は、大幅な見直しが図られることになりました。
まず顕著に影響が表れた例として、原子力発電所の稼働数が激減したことにより、その穴を埋めるために火力発電による発電量が一気に増えたことが挙げられます。
また2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まったことも、業界の変遷の中で特徴的です。
これは新エネルギーに分類される太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電の5つによって発電された電力を、電力会社が一定価格で一定期間買い取るというもので、かなりニュースでも取り上げられたと思います。
新エネルギーの導入を促進するためには必要な政策でしたが、これらの発電方法は一定の安定した電力を得るためには向いていません。
太陽光発電は夜間に発電できないこと、風力は天候によって発電量が不規則など、よく知られた欠点があるね!
電力の調達先が複雑化したことによって、送電網の強化も必要となり、これが追いついていない地域では、再エネの電源が送電網に接続できないといった弊害も起こっています。
こういった不安点が残る中、2016年に電力の全面自由化がなされました。
第5次:小売事業の全面自由化(2016年)
ついに電力自由化の目標である、全面自由化が2016年に開始されました。
これによって低圧・電灯を含めて小売りが全面的に自由化となり、一般家庭やコンビニエンスストアなどでも電力の契約先を決められるようになりました。
区分 | 交流 | 直流 |
低圧 | 600V 以下のもの | 750V 以下のもの |
高圧 | 600V をこえ 7,000V 以下のもの | 750V をこえ 7,000V以下のもの |
特別高圧 | 7,000V を超えるのもの | 7,000V を超えるのもの |
新電力は固定価格買取制度(FIT)に加え、この全面自由化によってさらに増加し、日本の電源構成における再エネ比率は、2019年のエネルギー白書において「17年に16%に拡大」と報告されています。
また第5次の改革では以下の2点も行われました。
- 電力広域的運営推進機関の創設
- 電力取引監視等委員会の設置(現在の電力・ガス取引監視等委員会)
1は緊急時の需給調整を全国で行う際にリーダーシップをとる機関であり、2は市場の健全化や活発化を促すために設置されました。
このような体制のもと、ガス・石油、通信事業者など他分野から参入が拡大しており、また電力会社自体もこれまで自エリアのみだった販売範囲が、他のエリアへと拡大したため、電力業界の競争は激化しています。
一方、電気事業連合会HPによると、電力需要自体は震災以降、省エネ意識の向上が図られたことなどを理由に、一定の数値で推移している状態です。
電力需要が一定で、参入業者が増えるということは、限られたパイを奪い合っているってことになるね。
発送電分離の実施(2020年)
自由化後、電力業界で起こった大きな動向としては、発送電分離が挙げられるでしょう。これは電力の自由化とつながってくる出来事でもあります。
発送電分離は2020年4月に実施され、沖縄電力を除外した電力会社8社において、発電部門と送配電部門が別会社となり分離したことを指します。
これまで1995年~2016年にかけて行われた電力の自由化ですが、この発送電分離が行われることによって、すべての企業が公平に送配電設備を利用できるようになるのです。
送配電部門が電気事業者(電力会社)と新規参入事業者を平等に扱わないと、健全な競争が行われない。そのため別会社化する必要があったんだね。
またこれまで電力会社では総括原価方式という方法で、電気料金を決定していました。
これは発電や送電にかかったコストに応じて電気料金を算出するというもので、設備投資や諸費用を確実に回収することが可能で、電力会社の経営ひいては電力の安定供給に貢献していました。
しかし経営の効率化がこれでは中々進まないため、改革が求められたという背景もあります。
でも分社化することで、様々なコストがかかるという懸念もあり、今後手探りな状態が続くかもしれない。
ちなみに資源エネルギー庁のHPではかなり詳しく「発送電分離」について書かれています。↓
以上、最近までの電力業界の動向でした。
まとめ
ここまでかなり長くなりましたが、電力の自由化、それにかかわる電力業界の変遷について如何だったでしょうか?
かなり抜けたり、省略したりした部分もあるので、気になった方は随所に貼ったURLから調べてみると良いと思います。
色々調べた中で思ったことは
電力会社の現場で働く人は、きっと大変だろうなあ……
という小学生並みの感想です(´;ω;`)
安定電源となる原発の運用では批判され、自由化や発送電分離で需給バランスの維持が難しくなり、競争激化で利益がひっ迫していく……
結局こういった無理というのは、現場へと一番圧し掛かるのではないか、と個人的に思います。
電力会社のみなさん、頑張ってください!!
また内容について不備など在りましたら、連絡していただけると幸いです。
以上
コメント
はじめまして。
分かりやすい解説で、大変とっつきやすいサイトですね。
新入社員にサイトを教えて、勉強させます。
記事の更新を楽しみにまっています。