概要
電波式(レーダー式)レベル計とは、マイクロ波(パルス波)を計器本体から発射し、液体や粉体の表面から反射されるまでの時間から、液位を計測する計装機器です。
詳しい原理は後述しますが、比較的単純で、過去は電波(マイクロ波)ではなく超音波を利用する超音波式レベル計が使われていました。
しかし超音波は音波であるため、プロセス中の気体が変わると、媒質が変わるために音速が著しく変わり、正確な伝搬時間が計測できないという問題がありました。
しかしマイクロ波は電磁波(つまり光)であるため、気体などのプロセスの影響を受けづらく、そのため電波式レベル計は近年多用されています。
電波式レベル計の原理
電波式レベル計の原理について、イラストにまとめましたのでご参照ください。
先述したとおり、電波式レベル計は「計器から放射したマイクロ波が液面で反射し、その反射波が計器に戻った時間」から計器~液面の距離を算出します。
式に直すと以下のようになります。
$$距離d=マイクロ波速度c×伝搬時間Δt/2$$
またマイクロ波は気体の影響を受けづらいと述べましたが、電磁波であるため高圧・高温・真空下においても影響が小さくなります。
このように良いところが多い電波式レベル計ですが、デメリットもあります。
非接触でありながらプロセスの影響も受けにくいのですが、高機能ゆえに価格が高い傾向にあることがデメリットに上がります。
他にもマイクロ波が測定面で反射する必要があるため、比誘電率が低い測定物は不得意です。
電波式レベル計の種類
原理が分かったところで、電波式レベル計の代表的なタイプを見ていきましょう。
ここでは大きく三種類ほど触れます。
アンテナホーン型
マイクロ波を放射するアンテナが、ホーンに覆われているタイプです。
電波式(レーダー式)レベル計といえば、これが一般的なモデルになります。
ガイド式
プローブを取り付け、電波をその表面に伝搬させることで、減衰を抑えることが出来るモデルです。
プローブが直接接液してしまうデメリットがありますが、安定した電波の送受信ができるため、比誘電率が低い測定物や、狭いタンクなどに適用することが出来ます。
ロッド式
アンテナがテフロンに覆われているモデルになります。
浸透性が高い液体や薬品などを測定する場合や、比較的小さいタンクなどに適用することが可能です。
形状としては上記三つが多くみられますが、他には周波数帯ごとに特徴の異なるモデルが用意されています。
マイクロ波の周波数には6GHz、10GHz、24~26GHzがラインナップとして、各メーカーから出されているようです。
周波数が低いモデルは気泡や水滴などの影響を受けづらい特徴を持ち、周波数が高いモデルは電波の直進性が高く、放射角が小さいという特徴があります。
これらの特徴を知っておくと、選定の際に役に立つかもしれません。
電波式レベル計の注意点
電波式レベル計は非接触で、プロセスの影響を受けにくいという長所を持っていますが、選定と運用においては少し注意が必要です。
①電波の放射角
電波(マイクロ波)は、ガイド式でなければ基本放射状に広がってしまうため、タンクなどに使用する際は、壁面や障害物に当たってしまわないように注意する必要があります。
②蒸気、粉塵の影響
マイクロ波は経路上の気体の影響は受けにくいのですが、測定物の蒸気や粉塵によってわずかに電波が反射してしまうケースがあります。
これの誤検知を防ぐため、実液で試運転する際に反射波の測定カーブを確認し、不要な範囲を不感帯にする必要があります。
このあたりはメーカーのエンジニアに任せるケースが多いかもしれませんが、知っておくと少し便利かもしれません。
以上、私の失敗経験も踏まえた注意点になります。
まとめ
- 電波式(レーダー式)レベル計は、マイクロ波の反射にかかる伝搬時間から液位を測定する。
- 気体などのプロセスの影響を受けにくい非接触式のレベル計だが、比誘電率が低い液体などはやや不向き。
参考文献・サイト
- 川村貞夫/石川洋次郎『工業計測と制御の基礎―メーカーの技術者が書いたやさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎 第6版』工業技術社,2016年
- エンドレスハウザー『安全性、計測の信頼性、扱いやすさを 向上した 非接触式マイクロ波レベル計 マイクロパイロット FMR50 シリーズ』https://portal.endress.com/wa001/dla/5001081/2897/000/00/IN01106F_33_JA_01.17.pdf
- 株式会社エム・システム技研 『レベル計のお話 第7回 マイクロ波式レベル計』 https://www.m-system.co.jp/rensai/pdf/r0307.pdf
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