高圧受電設備のキュービクル内で、R・S・Tの3相分の導体をまとめて通しているリング状の機器を見たことはないでしょうか。
この機器が零相変流器(ZCT)です。通常の変流器(CT)が貫通させた導体の相電流を測るのに対し、ZCTは同一回路の全相導体をまとめて通し、その電流のベクトル和に相当する残留分を検出します。
ZCTは地絡電流を検出するセンサであり、単体で回路を遮断する機器ではありません。ZCTの信号を地絡継電器(GR)や地絡方向継電器(DGR)へ送り、継電器が遮断器へトリップ指令を出すことで地絡保護が成立します。
ようはZCTとは、同じ回路の全相導体を1個の鉄心へ通し、窓を通った電流の合計がゼロにならずに残った分を検出する変流器なんですね。
この記事で分かること
- ZCTが地絡電流を検出する仕組み
- 3相のケーブルを1個のZCTへまとめて通す理由
- 通常のCTとZCTの違い
- GR・DGR・ZPD・VCBとの関係
- K・L極性と二次配線の考え方
- 高圧ケーブルのシールド接地線を扱うときの注意点
- 施工・点検で確認したいポイント

零相変流器(ZCT)とは
零相変流器(ZCT:Zero-phase-sequence Current Transformer)とは、回路の全充電導体を1個の鉄心へ通し、各導体を流れる電流のベクトル和を検出する変流器です。
日本の高圧受電設備では、主に6.6kV三相3線式回路の地絡保護に使用されます。単心3本、CVT、3心ケーブルなど外形が異なっても、R相・S相・T相の全相導体を同じZCTへ通し、地絡事故で生じる零相電流を検出してGRやDGRへ伝えます。
ZCTの代表的な構成は次のとおりです。
- 鉄心:3相電流がつくる磁束の合成分を受ける環状の磁性体
- 二次巻線:鉄心に生じた合成磁束を電気信号へ変換する巻線
- 一次導体:ZCTの窓を貫通するR・S・T相の全相導体
- 二次端子:検出信号をGRやDGRへ送る端子
- 試験端子:試験巻線を備える機種で、模擬地絡電流を与えるために使う端子
貫通形ZCTでは、窓を1回貫通する各相導体がそれぞれ一次巻線の1ターンに相当します。ZCTと一次導体は電気的に直結されず、磁気的に信号を取り出します。
製品にはケーブルを一度外して通す貫通形のほか、既設ケーブルへ後付けしやすい分割形もあります。ただし、分割面の締結状態や適合する継電器は製品ごとに確認が必要です。
ZCTが地絡電流を検出する原理
ZCTの原理で最も大切なのは、電流の大きさを単純に足すのではなく、位相を含むベクトルとして足し合わせることです。

正常時は3相電流のベクトル和がほぼゼロになる
三相回路が健全で、ZCTより負荷側から大地へ流出する電流がないとき、3相線電流のベクトル和は理想的には次のようになります。平衡負荷では3本の電流は同じ大きさで位相が120度ずつ異なります。不平衡負荷でも、三相3線式で同一回路の全相導体が同じZCTを通り、窓外へ電流が流出していなければ、キルヒホッフの電流則によりその和はゼロです。
IR+IS+IT=0
各相がつくる磁束も鉄心内で打ち消し合うため、ZCTの二次巻線には地絡を示す出力がほとんど現れません。
負荷電流が大きくても、同じ回路から出ていく電流と戻ってくる電流がすべてZCTの窓を通っていれば、合成した残留分は小さくなります。これが、ZCTが大きな負荷電流の中から小さな地絡電流を検出できる理由です。
地絡時は大地へ戻る電流がZCTの外を通る
ZCTより負荷側で1相が地絡すると、電流の一部は設備の接地系や大地を通って電源側へ戻ります。この戻り道はZCTの窓を通らないため、ZCTを貫通した3相電流のベクトル和がゼロになりません。
すると鉄心に合成磁束が生じ、二次巻線から地絡継電器へ信号が出力されます。
対称座標法では、零相電流I0は次のように定義されます。
I0=(IR+IS+IT)÷3
したがって、ZCTを貫通する3相電流のベクトル和、つまり残留電流は3I0です。
Ioと3I0の表記について
保護継電器のカタログや現場図面では、ZCT一次側で検出する零相電流を慣用的に「I0」と表記する場合があります。一方、対称座標法では3相電流の和は3I0です。式を読むときは、資料がどちらの定義で表しているか確認しましょう。
通常のCTとZCTの違い

CTとZCTはどちらも電磁誘導を利用する変流器ですが、目的と一次導体の通し方が異なります。
| 比較項目 | CT(変流器) | ZCT(零相変流器) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 各相の電流計測、過電流保護 | 地絡・漏洩電流の検出 |
| 一次導体 | 原則として1相を1個のCTへ通す | 同一回路の全充電導体を1個へ通す |
| 高圧三相3線式の代表構成 | 計測・保護方式に必要な相へ設置(2台または3台など) | R・S・T相の全相導体を1個へまとめて通す |
| 検出する量 | 各相電流 | 3相電流のベクトル和に相当する残留分 |
| 接続先の例 | 電流計、電力計、OCR、多機能リレー | GR、DGR、漏電リレー、絶縁監視装置 |
通常のCTを3個並べた残留回路でも零相成分を求められる方式はありますが、ZCT方式とは構成や適用する接地系が異なります。高圧の非接地系で小さな地絡電流を高感度に検出する用途では、専用ZCTと対応継電器の組合せが一般的です。
CT・VT・VCTの役割を整理したい方は、VCT(MOF)とCT・VTの違いも参考にしてください。
ZCTとGR・DGR・VCBの関係
ZCTは検出器です。地絡事故を判定するのはGRやDGRであり、事故回路を開くのはVCBなどの遮断器です。

GR方式
地絡継電器(GR)は、主にZCTから入力された零相電流の大きさが整定値を超えたかどうかで動作します。
構成が比較的シンプルですが、構内ケーブルの対地静電容量が大きい場合、保護範囲外の地絡事故で流れる充電電流を拾い、不要動作する可能性があります。系統条件によってはDGRを検討します。
DGR方式
地絡方向継電器(DGR)は、ZCTから得る零相電流I0だけでなく、ZPDやZVTから得る零相電圧V0も入力し、両者の位相関係から地絡事故の方向を判定します。
これにより、自設備側の事故と保護範囲外の事故を区別しやすくなります。DGRの位相特性や「もらい事故」については、地絡方向継電器(DGR)の原理と誤動作で詳しく解説しています。
キュービクル内のCB方式では、ZCT・ZPDなどの検出器 → DGR → VCBの引外し回路という流れで構成します。高圧遮断器VCBの構造と継電器による動作も合わせて読むと、検出から遮断までの役割分担が分かりやすくなります。
一方、柱上PASを使う方式では、PASに内蔵または組み合わされたZCT・ZPDの信号をSOG制御装置へ入力し、PASを開放します。CB・DGR方式とPAS・SOG方式は別の保護構成なので、1枚の回路図で混ぜないようにしましょう。PAS側の構成はPASの構造とSOG動作で確認できます。
K・L極性とZCTの二次配線

一次側はKが電源側、Lが負荷側
高圧用ZCTには、一次側の向きを示すK・Lが表示されている機種があります。三菱電機の地絡方向継電器に関する技術資料では、Kが電源側、Lが負荷側となるようにケーブルを貫通させるよう示されています。
非方向性のGRではZCTの向きを逆にしても動作上支障がないとする機種がありますが、DGRではI0とV0の位相関係で方向を判定するため、極性が重要です。施工時は「方向性かどうか」だけで自己判断せず、ZCT・継電器・ZPDを含むメーカーの外部接続図に合わせます。
二次配線は指定の線種・極性・接地方法を守る
高感度な地絡継電器では、主回路や他の制御線から受けるノイズを抑えるため、ZCTから継電器まで2芯シールド線を使用する例があります。
図は、三菱電機の高圧地絡継電器で示される代表例を簡略化したものです。シールドを継電器端子Eまたは盤内EDへ接続しますが、この接地方法は全メーカー・全用途で共通ではありません。低圧用の組合せではZCT二次側やシールドを接地しないよう指定する製品もあります。
そのため、次の項目は必ず使用機種の取扱説明書で確認します。
- ZCTと継電器の適合する組合せ
- k・ℓ端子の極性
- シールド線の線種と許容配線長
- シールドの接地点
- ZCT二次回路の接地・短絡・開放条件
- 試験端子kt・ℓtの使用方法
試験端子を備える機種では、kt・ℓtは模擬地絡電流を流す試験時だけ使用し、通常時は開放すると指定される例があります。また、継電器へ接続しないときにk・ℓを短絡するよう指定される製品もあります。通常のCTで覚えた扱いをそのまま当てはめず、機種ごとの指示を優先してください。
高圧ケーブルのシールド接地線はどう通すのか
ZCT周辺で特に間違いやすいのが、高圧ケーブルの金属シールド(しゃへい層)から取り出す接地線です。
まず、同じ「接地線」に見える3種類を分けましょう
- 高圧ケーブルのシールド接地線:この節で説明する対象
- 盤・機器の保護接地線:この節の通し方を当てはめない
- ZCTと継電器を結ぶ二次配線のシールド:一次側とは別回路なので、機種ごとの指定に従う
ここから説明するのは、1番目の高圧ケーブルの金属シールド接地線だけです。判断のポイントは、シールドをZCTの負荷側と電源側のどちらで接地するかです。
オムロンの高圧地絡継電器AGF・ZCTの公式資料では、6kVケーブルのシールドについて、次のように整理できます。
| シールドの接地点 | 接地線の通し方 | 整理 |
|---|---|---|
| 負荷側 | ZCTの窓へ戻して通さない | 負荷側で1点接地する基本形 |
| 電源側 | 接地線をZCTの窓へ1回通してから接地する | 電源側で取り出す場合のメーカー指定例 |
| 電源側と負荷側の両方 | ― | 2点接地にしない |
このメーカー資料例の覚え方
負荷側で1点接地が基本。電源側から取り出す場合は、接地線をZCTへ1回通してから1点接地。

接地線を通す目的は、シールド層に流れる電流がZCTの検出へ与える影響を、指定された保護範囲と整合させることです。ZCT位置と接地点の組合せを設計図から変えると、構成によってはケーブル地絡を検出できなくなったり、充電電流で不要動作したりする問題につながります。
この整理の対象は、高圧ケーブルの金属シールド接地線だけです
盤・機器の保護接地線や、ZCT二次配線のシールドへ同じ判断を流用してはいけません。また、ここで示したのは6kVケーブルとAGF・ZCTのメーカー資料に基づく代表例です。引込用ケーブルか送出し用ケーブルか、ZCT・遮断器・ケーブルヘッドの位置関係によっても保護範囲と充電電流の影響は変わります。実際の施工では、使用する機器の接続図、設計図書、高圧受電設備の保安規程・社内標準を優先してください。
三菱電機の保護継電器資料でも、シールド接地方法によってケーブル自体の地絡保護範囲や、外部事故時のケーブル充電電流による影響が変わることが示されています。ケーブルが長く対地静電容量が大きい場合は、DGRを含めた保護方式の検討が必要です。
ZCTの選定で確認する項目
ZCTは窓にケーブルが入れば何でも使えるわけではありません。少なくとも次の項目を確認します。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 回路電圧・絶縁条件 | 高圧用はケーブル絶縁との組合せを含めて使用条件が定められるため |
| 定格一次電流 | 窓径だけでなく、適用できる最大一次電流が形式ごとに異なるため |
| 貫通穴径 | 3相分の導体またはケーブル集合部の仕上がり外径、配置、曲げ、施工余裕を確保するため |
| 貫通形・分割形 | 新設か既設改修か、ケーブルを外せるかで施工方法が変わるため |
| 組合せ継電器 | ZCTと継電器は変流比、負担、極性、特性を含めて指定されるため |
| 一次導体の種類 | 高圧絶縁電線とシールド付高圧ケーブルで適用条件が異なる製品があるため |
| 二次配線条件 | 線種、許容抵抗、配線長、シールド接地方法が継電器ごとに異なるため |
例えば三菱電機の現行ZCTには、貫通穴径60mmから170mmの貫通形や、120mmの分割形などがあります。富士電機の高圧用ZCTにも定格一次電流や貫通穴径の異なる製品があります。選定では現物寸法だけでなく、適合継電器と使用条件をセットで確認しましょう。
施工・点検で間違いやすいポイント
1.3相を別々のZCTへ通さない
高圧三相3線式のZCT方式では、R・S・T相の全相導体を1個のZCTへまとめて通します。単心3本でもCVT・3心ケーブルでも考え方は同じです。1相または2相だけを通すと、正常な負荷電流を地絡電流として検出してしまいます。
2.ZCTの窓内で3相を偏らせすぎない
大電流時の残留出力を抑えるため、メーカー資料ではZCT貫通部で3相を対称に配置するよう示される例があります。三菱電機MELPRO-Aの資料では、ケーブルの曲げ半径を導体外径の10倍以上とし、ZCT貫通部では三相対称に配置するよう記載されています。
数値は製品・ケーブルにより異なるため、実際の施工ではZCTとケーブル双方の許容曲げ半径、支持方法、離隔を確認してください。
3.K・Lとk・ℓを混同しない
大文字のK・Lは一次側の方向、小文字のk・ℓは二次端子を示す表記として使われます。方向性継電器では、一次方向と二次極性の両方が判定方向に関係します。
4.試験端子を通常配線へ流用しない
kt・ℓtは試験巻線用です。通常の二次出力端子k・ℓと同じように扱わないでください。試験後に短絡したままにすると動作へ影響する機種があります。
5.指定外のZCTと継電器を組み合わせない
ZCTは見た目が似ていても、変流特性、定格負担、二次出力、極性が異なります。特にDGRではZCT・ZPD・継電器を一体の保護装置として適用するため、指定された組合せを守ります。
6.分割形は分割面と締結状態を確認する
分割形ZCTでは、分割面の異物、傷、片締め、締結不足が磁気特性に影響するおそれがあります。メーカーの組立手順と締付条件に従い、ケーブル外装も傷つけないように施工します。
保守点検では何を見るのか
ZCTは盤内に固定されているため動く部分はありませんが、地絡保護システム全体として定期的に確認する必要があります。
- ZCT本体の割れ、欠け、変色、汚損、緩み
- R・S・T相の全相導体が同じZCTを正しく貫通しているか
- K・L方向とケーブルの電源側・負荷側が合っているか
- 二次端子、試験端子、シールド端末の緩みや腐食
- 二次配線が主回路やノイズ源へ不用意に近接していないか
- ケーブルシールドの接地点とZCTへの通し方が図面どおりか
- ZCT・ZPD・GR/DGRの形式組合せが設計どおりか
- 継電器試験で動作値、動作時間、方向性、警報、VCBトリップまで確認できるか
地絡継電器のテストボタンだけでは、ZCT一次側から遮断器までを含む保護回路全体を確認できない場合があります。停電、試験器、模擬入力、遮断器連動の要否を含め、保安規程と試験要領に従って実施してください。
よくある疑問
ZCTは地絡すると自分で回路を切るのですか?
いいえ。ZCTは地絡電流を検出するセンサです。GRやDGRが判定し、その接点でVCBなどの引外し回路を動作させます。
負荷電流が不平衡でもZCTは動作しますか?
三相3線式では、負荷の不平衡があっても同じ回路から出入りする電流のベクトル和は原理上ゼロです。ただし、導体配置、外部磁界、ケーブル充電電流、高調波、ZCTの残留特性などによって実際の出力は完全なゼロにならないため、機器の性能と整定を含めて評価します。
DGRにはZCTだけあればよいですか?
いいえ。一般的な高圧DGRは、事故方向を判定するためにZCTの零相電流I0と、ZPD・ZVTなどで検出する零相電圧V0の両方を使います。
高圧ケーブルのシールド接地線はZCTへ通すのですか?
この記事で示した6kVケーブルとAGF・ZCTのメーカー資料例では、シールドを負荷側で1点接地するのが基本で、この場合は接地線をZCTへ戻して通しません。電源側から接地線を取り出す場合は、その接地線もZCTの窓へ1回通してから1点接地します。これは高圧ケーブルの金属シールド接地線についての説明であり、盤・機器の保護接地線やZCT二次配線のシールドには流用しません。実設備ではメーカー接続図と設計図書を優先してください。
まとめ
- ZCTは3相電流のベクトル和に相当する残留分を検出する
- 高圧三相3線式ではR・S・T相の全相導体を1個のZCTへまとめて通す
- 正常時は合成磁束が打ち消し合い、地絡時は大地へ戻る電流によって残留分が生じる
- CTは各相電流、ZCTは零相電流の検出が主目的
- GRは主に電流の大きさ、DGRはI0とV0の位相関係で判定する
- 方向性保護ではKを電源側、Lを負荷側として極性を合わせる
- 二次配線、シールド接地、試験端子の扱いは機種指定に従う
- 高圧ケーブルのシールド接地線は、接地点と保護範囲を確認して施工する
ZCTは、リングの中へ3相分の導体を通しただけに見える機器です。しかし実際には、電流の戻り道、極性、シールド接地、GR・DGRとの適合まで含めて地絡保護が成立します。単体ではなく、地絡を検出して遮断するシステムの入口として捉えると理解しやすくなります。
参考資料
- 三菱電機FA:計器用変成器 製品特長(零相変流器)
- 三菱電機FA e-Learning:地絡方向継電器の使用上の注意
- 三菱電機:保護継電器 MELPRO-A カタログ
- オムロン:AGF 高圧地絡継電器/ご使用の前に
- オムロン:OTG-N/OTG-D 零相変流器/ご使用の前に
- 富士電機:高圧真空遮断器・地絡保護用別売品カタログ
※本記事はZCTの原理と一般的な施工・点検の考え方を解説したものです。実設備の設計、工事、整定、試験は、適用法令、保安規程、電力会社との保護協調、機器メーカーの最新取扱説明書に従い、有資格者・専門技術者が実施してください。
