制御盤の中を見ると、非常停止スイッチや安全扉の配線先に「セーフティリレー」と呼ばれる機器が取り付けられていることがあります。
外観は細長いリレーや小形PLCに似ていますが、一般的なリレーとは役割が異なります。
セーフティリレーは、非常停止スイッチ、安全扉スイッチ、ライトカーテンなどから安全信号を受け取り、異常や故障を監視しながら機械を安全な状態へ移行させるための機器です。
本記事では、セーフティリレーの役割、内部構成、非常停止時の動作、一般リレーや安全PLCとの違い、現場で確認すべき注意点について、イラストを交えながら解説します。
この記事で分かること
- セーフティリレーが必要になる理由
- 二重化、自己監視、強制ガイド接点の考え方
- 非常停止からモーター停止までの動作順序
- フィードバック回路で接点溶着を監視する仕組み
- 一般リレー、安全PLCとの違い
- 安全回路を設計、点検するときの注意点

セーフティリレーとは
セーフティリレーとは、機械の安全機能を実行するために、安全入力、内部回路、出力機器の状態を監視する制御機器です。
メーカーによっては「セーフティリレーユニット」「安全リレーモジュール」と呼ばれます。
主に次のような安全機器と組み合わせて使用します。
- 非常停止スイッチ
- 安全扉スイッチ、ガードロックスイッチ
- ライトカーテン、レーザスキャナ
- 両手操作スイッチ
- 感圧マット、感圧エッジ
安全が確認できているときは、セーフティリレーの安全出力がONとなり、外部の電磁接触器や安全対応機器の動作を許可します。
一方、非常停止スイッチが押された場合や安全扉が開いた場合は、安全出力をOFFにして、モーターなどの危険な動力を停止させます。
ここで重要なのは、セーフティリレーは単に停止信号を中継するだけではないという点です。
入力から出力までの故障を監視し、安全を確認できない場合は起動を許可しないことが、セーフティリレーの中心的な役割になります。
一般リレーだけでは不十分な理由
一般的なメカニカルリレーも、コイルへ通電して接点を切り替える機器です。
そのため、「非常停止スイッチで普通のリレーをOFFにすればよいのでは」と考えるかもしれません。
しかし、一般リレーの接点が溶着した場合、コイルへの通電を止めても接点が開かず、機械が停止しない可能性があります。
また、非常停止スイッチの配線が短絡したり、1本の電線が外れたりしても、単純な一重回路では故障を検出できない場合があります。

セーフティリレーでは、用途と必要な安全性能に応じて、次のような仕組みを組み合わせます。
- 入力信号を2系統で受ける二重化
- 2系統の動作が一致しているかを確認する監視
- 内部回路や出力接点の自己診断
- 外部コンタクタの状態を確認するフィードバック監視
- 故障を検出した場合に再起動を防止する仕組み
つまり、一般リレーは主に信号や負荷を開閉する機器であり、セーフティリレーは故障が起こることを前提として、安全機能が失われないよう監視する機器という違いがあります。
強制ガイド接点を持つリレーを1個使っただけで、安全回路全体が成立するわけではありません。必要な安全性能は、入力機器、配線、論理部、出力機器を含む回路全体で確認します。
セーフティリレーの基本構成
一般的なセーフティリレーは、制御盤内のDINレールへ取り付ける細長いモジュール形状をしています。
前面には電源、入力、出力、エラーなどを示す表示灯があり、上下には電源、2系統の安全入力、リセット、フィードバック、安全出力などの端子が並びます。

安全入力
安全入力は、非常停止スイッチや安全扉スイッチなどの状態を受け取る部分です。
2チャンネル構成では、独立した2系統の信号を監視します。片側だけが変化した場合や、2系統の動作タイミングに異常がある場合は、断線、接点不良、配線短絡などの可能性を判定します。
ライトカーテンなどの電子式安全機器では、OSSDと呼ばれる2系統の安全出力を接続する構成もあります。
内部の二重化回路と自己監視
セーフティリレーの内部では、2つの独立した経路で入力を処理し、互いの状態を監視する構成が使われます。
製品によって具体的な回路や診断方法は異なりますが、片側の部品が故障した場合でも危険側の出力を出し続けないこと、故障したまま次の起動を許可しないことが重要です。
強制ガイド接点
強制ガイド接点とは、a接点とb接点が機械的に連動するよう設計されたリレー接点です。
例えばa接点が溶着して開かなくなった場合、対応するb接点が閉じない構造となっているため、接点溶着を別の監視回路から検出できます。
IEC 61810-3では、強制ガイド接点を持つ電磁式リレーに対する要求事項と試験が規定されています。
リセット・フィードバック入力
リセット入力は、非常停止スイッチなどが正常状態へ戻ったあと、安全出力を再びONにするための確認入力です。
フィードバック入力は、外部の電磁接触器などが実際に開放したかを確認するために使用します。一般にコンタクタのb接点を戻して、主接点の溶着や開放不良を監視します。
安全出力と補助出力
安全出力は、外部コンタクタや安全対応機器を動作させるための出力です。
補助出力は、表示灯や一般PLCへ動作状態を知らせる用途に使われます。補助出力は診断や表示には便利ですが、製品仕様で安全出力として認められていない端子を安全機能に使用してはいけません。
非常停止時の動作原理
ここからは、非常停止スイッチ、セーフティリレー、2台のコンタクタ、モーターを組み合わせた例で、動作の流れを見ていきましょう。

①通常時に安全状態を確認する
非常停止スイッチが解除され、安全扉が閉じ、外部コンタクタも開放可能な正常状態であることを確認します。
手動リセット方式では、さらにリセットスイッチが正しく操作されることで、安全出力をONにする準備が整います。
セーフティリレーの安全出力がONになると、機械の運転回路が起動可能な状態になります。
②非常停止スイッチが押される
作業者が非常停止スイッチを押すと、非常停止スイッチ内の接点が開き、2系統の安全入力がOFFになります。
片側だけがOFFになった場合は、もう一方の接点や配線に異常がある可能性があるため、安全出力を再びONにしないよう監視します。
③セーフティリレーが安全出力をOFFにする
安全入力のOFFを検出したセーフティリレーは、内部の出力リレーまたは安全半導体出力をOFFにします。
安全回路では、電源や信号が失われたときに安全側へ移行する考え方が基本になります。ただし、必要な停止方法は機械の危険源やリスク評価によって決まります。
④コンタクタが開放してモーターを停止する
セーフティリレーの出力がOFFになると、外部コンタクタKM1、KM2のコイルが消磁され、主接点が開きます。
これによりモーターへ供給されていた動力が遮断され、危険な動作が停止します。
セーフティリレー自身が大容量モーターの主回路を直接遮断するのではなく、外部コンタクタなどの最終出力機器を正しいタイミングで動かす構成が一般的です。
⑤フィードバックを確認して再起動を判断する
停止後、セーフティリレーはKM1、KM2の補助b接点を通して、両方のコンタクタが開放したことを確認します。
非常停止スイッチを解除しても、コンタクタが溶着してフィードバック回路が正常状態へ戻らなければ、安全出力をONにしません。

ここで重要なのは、停止できたかどうかを出力命令だけで判断せず、外部機器の戻り信号まで確認するという点です。
一般リレー・セーフティリレー・安全PLCの違い
安全回路で使われる機器を整理すると、一般リレー、セーフティリレー、安全PLCでは役割と適用範囲が異なります。
| 比較項目 | 一般リレー | セーフティリレー | 安全PLC |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | 信号や負荷の開閉 | 少数の安全機能を監視、実行 | 複数の安全機能をプログラムで制御 |
| 故障監視 | 通常は回路側で別途検討 | 二重化、自己監視、フィードバック監視 | 安全CPU、安全I/O、通信を含めて診断 |
| 設定方法 | 配線 | 配線、スイッチ設定、機種によって簡易設定 | 認定された開発環境で安全プログラムを作成 |
| 適した規模 | 一般制御 | 非常停止や安全扉が少ない小規模設備 | 安全入力、ゾーン、設備連携が多い中・大規模設備 |
| 変更の柔軟性 | 配線変更が必要 | 機能が比較的固定 | プログラム、ネットワークで拡張しやすい |
| 安全用途 | 単体で安全論理部の代用はしない | 認証範囲と配線例に従って使用 | 安全認証されたCPU、I/O、ツールを使用 |

セーフティリレーが向いている設備
非常停止スイッチが1つ、安全扉が1つというように、安全機能が少なく、停止範囲も単純な設備ではセーフティリレーが使いやすいです。
安全プログラムを作成せず、メーカーが示す配線例と設定に従って構成できるため、回路の動きも追いやすくなります。
安全PLCが向いている設備
非常停止、安全扉、ライトカーテン、安全速度監視などが多数あり、設備ごとに停止範囲を分ける場合は安全PLCが適しています。
安全ネットワークを利用して離れた安全I/Oを接続したり、複数の安全条件を組み合わせたりできる点が強みです。
ただし、一般PLCへ安全回路のラダーを組んだだけでは、安全PLCにはなりません。安全用途では、安全認証されたCPU、I/O、通信、開発ツールを、適合条件に従って使用します。
現場での注意点
PL・SILは安全回路全体で確認する
セーフティリレーのカタログには、「PL e対応」「SIL 3対応」などと記載される場合があります。
しかし、これは製品単体を選べば安全回路全体が自動的にそのレベルへ到達するという意味ではありません。
実際に達成できるPLやSILは、入力機器、配線、セーフティリレー、コンタクタ、診断方法、故障率、共通原因故障対策などを含む安全機能全体で評価します。
ISO 13849-1やIEC 62061などの考え方に基づき、機械のリスクアセスメント、必要な安全機能、要求性能を先に決めることが重要です。
メーカーの配線例をそのまま別機種へ流用しない
安全入力端子、リセット方式、短絡検出方法、接続できるOSSD、フィードバック回路は製品ごとに異なります。
端子番号や配線例を別機種へ流用せず、使用する機種の取扱説明書、認証範囲、適用条件を確認してください。
リセットと運転開始を分けて考える
リセットは、安全入力と外部機器が正常状態へ戻ったことを確認し、安全機能を復帰可能にする操作です。
リセットボタンを押しただけで危険な動作が突然始まらないよう、運転開始指令との関係を設計する必要があります。
自動リセットと手動リセットのどちらを使うかは、機械内部へ人が入れるか、危険区域を見渡せるか、再起動による危険がないかなどを含めて決定します。
表示灯だけで正常と判断しない
セーフティリレーの表示灯は、入力状態やエラー箇所の確認に役立ちます。
ただし、表示灯が正常でも、非常停止スイッチ、配線、コンタクタ、機械側の停止動作まで正常とは限りません。
試運転や定期点検では、非常停止、安全扉、リセット、接点溶着監視などを含め、安全機能が意図した通りに動作することを実機で確認します。
セーフティリレーを一言でいうと
セーフティリレーとは、非常停止などの安全信号を受け取るだけでなく、入力、内部回路、外部出力機器の故障を監視し、安全を確認できないときは機械の起動を許可しない機器です。
まとめ
- セーフティリレーは、非常停止スイッチや安全扉などを監視して機械を安全な状態へ移行させる。
- 二重化、自己監視、強制ガイド接点、フィードバック監視などを組み合わせて故障を検出する。
- 非常停止時は安全出力をOFFにし、外部コンタクタを開放してモーターなどの危険な動力を停止させる。
- 小規模で単純な安全機能にはセーフティリレー、複数の安全ゾーンや安全通信には安全PLCが適している。
- PLやSILは製品単体ではなく、安全機能を構成する回路全体で評価する。
参考文献・サイト
- ISO 13849-1:2023 Safety of machinery — Safety-related parts of control systems
- IEC 62061:2021 Safety of machinery — Functional safety of safety-related control systems
- IEC 61810-3:2015 Relays with forcibly guided contacts
- オムロン「G9SE Safety Relay Unit」カタログ
- IDEC「HR6S形 安全リレーモジュール」
- Pilz「Function of safety relay explained」
- オムロン「セーフティリレーユニットのフィードバック回路」
- オムロン「NX-SL5 Safety CPU Unit」

