高圧受電設備の点検で、CVTケーブルの先端が3本に分かれ、黒色や灰色の細長い部材を介して開閉器や母線へ接続されているのを見たことはないでしょうか。
この部分が高圧ケーブルの終端接続部です。現場では「端末処理」「ケーブルヘッド」「CH」と呼ばれることもあります。
高圧ケーブルは、導体と絶縁体だけでなく、その外側に半導電層と金属遮へい層を持っています。機器へ接続するために遮へい層を途中で切り終えると、その先端へ電界が集中します。この電界集中を緩和し、絶縁・防水・接地・機械的支持を成立させるのが端末処理です。
ようは高圧ケーブル端末処理とは、ケーブルを機器へつなぐだけでなく、遮へい層端部の電界を整え、絶縁性能を保ったまま安全に終端するための処理なんですね。
この記事で分かること
- 高圧ケーブルに端末処理が必要な理由
- CV・CVTケーブルの層構成
- ストレスコーンが電界集中を緩和する仕組み
- テープ巻形、プレハブ形、収縮形の違い
- 施工の大きな流れと、現場で確認したい注意点

高圧ケーブル端末処理とは
高圧ケーブル端末処理とは、CVケーブルなどの先端を段階的に加工し、端子、電界緩和部、絶縁保護部、接地部などを組み立てて、高圧機器へ接続できる状態にする作業です。
この記事では、日本の高圧受電設備でよく使用される6.6kV級のCV・CVTケーブルを中心に説明します。CVは架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル、CVTは単心CVケーブル3条をより合わせたトリプレックス形です。
端末処理が使われる代表的な場所には、次のようなものがあります。
- PASや地中線用開閉器から高圧ケーブルを引き込む部分
- キュービクル内でLBS、VCB、DSなどへ接続する部分
- 変圧器や高圧電動機へ接続する部分
- 屋外の架空線と地中ケーブルを接続する部分
端末処理材は、ケーブル種類、導体断面積、屋内・屋外、汚損環境、接続機器などに合わせて選びます。見た目が似ていても、別のケーブルサイズや別用途の部材を流用できるとは限りません。
なぜ高圧ケーブルには端末処理が必要なのか
低圧ケーブルと高圧ケーブルでは、絶縁体の外側の構造が異なります。まずは下の図で、6.6kV級CVケーブルの層構成を見ていきましょう。

中心から順番に、代表的には次の層で構成されます。
- 導体:電流が流れる銅またはアルミニウムの部分
- 内部半導電層:導体表面の凹凸による電界の乱れを抑える部分
- 架橋ポリエチレン絶縁体:高電圧を絶縁する主絶縁
- 外部半導電層:絶縁体外周の電位を整え、金属遮へい層と電気的になじませる部分
- 金属遮へい層:一般に銅テープなどで構成され、接地して外部電界を抑える部分
- シース:水分、油、薬品、機械的損傷から内部を保護する外被
ケーブルの途中では、半導電層と金属遮へい層が絶縁体の外周を連続して覆っています。このため、絶縁体内部の電界は比較的均一に保たれます。
ところが端末では、導体を機器へ接続するため、外部半導電層と金属遮へい層を途中で切り終えなければなりません。すると、遮へい層の切断端付近では等電位線の間隔が狭くなり、局部的な電位傾度、つまり電界が大きくなります。
ストレスコーンの役割

ストレスコーンとは、遮へい層端部の形状や電気的特性をなだらかに変化させ、局部的な電界集中を緩和する部分です。「ストレス」は機械的な力ではなく、ここでは電気的ストレスを指します。
図の左側のように遮へい層を急に切り終えると、切断端付近で等電位線が密になり、電位傾度が大きくなります。右側のように円すい状の電界緩和部を設けると、接地電位側の境界が徐々に広がり、電界の変化を分散できます。図中の等電位線は、作用を理解するための概念表現です。
電界緩和の方法には、絶縁テープと半導電性材料を円すい状に巻き上げる方法、成形されたゴムストレスコーンを差し込む方法、電界緩和特性を持つチューブを収縮させる方法などがあります。
ストレスコーンは雷サージを吸収する避雷器ではありません。目的は、通常使用時を含めたケーブル端末の電界分布を整えることです。雷や開閉サージから設備を保護するLA・サージアブソーバとは役割が異なります。
高圧ケーブル終端接続部の構造
端末処理材によって細部は異なりますが、代表的な屋内プレハブ形終端接続部の構造を下の図に示します。

端子
露出させた導体へ圧着または圧縮し、開閉器や母線などの端子へボルト接続する部分です。導体サイズ、材質、接続方式に適合する端子を使用します。
絶縁保護部
露出した絶縁体と端子近傍を覆い、必要な沿面距離と絶縁性能を確保します。屋外形では雨水や汚損への耐性を高めるため、雨覆やひだを持つゴムとう管・ポリマー部材を使用する場合があります。
電界緩和部
ゴムストレスコーン、電界緩和テープ、ストレスコントロールチューブなどで構成されます。外部半導電層と金属遮へい層の終端位置をまたぐように配置し、電界の急変を抑えます。
遮へい層と接地線
銅テープなどの金属遮へい層は、すずめっき軟銅線や専用接地金具を介して接地します。接地方法は、地絡保護方式やケーブルこう長などに関係するため、電気主任技術者の指示と設計図書に従います。
ブラケットとゴムスペーサー
端末部とケーブルを支持し、3相の間隔や取付位置を保つ部品です。端子へケーブルの自重や引張力が直接加わらないように固定します。
端末処理方式の種類

テープ巻形
絶縁テープと半導電性材料を所定の形状へ巻き上げ、現場でストレスコーンを形成する方式です。構成を柔軟に調整できますが、所定の厚さ、重なり、張力、円すい形状を安定して作る技能が求められます。
プレハブ形
工場で成形されたゴムストレスコーンや端末本体を、段剝ぎしたケーブルへ差し込む方式です。テープ巻形と比べて構造を均一化しやすく、作業時間の短縮も期待できます。ただし、ケーブル外径、絶縁体径、導体断面積に適合した部材選定と、絶縁体表面の仕上げが重要です。
熱収縮形・常温収縮形
電界緩和用と絶縁保護用のチューブを、加熱または支持コアの除去によってケーブルへ密着させる方式です。製品によって部材構成や施工方法が異なるため、加熱条件、重なり、収縮開始位置などを工法書どおりに管理します。
屋内形・屋外形・耐汚損形
屋外では、雨水、紫外線、塩分、粉じんによる沿面絶縁低下を考慮した構造が必要です。雨覆やひだの数、外装材料、沿面距離は製品ごとに異なります。
「屋外用ならどこでも使える」「形が似ているから流用できる」と判断してはいけません。汚損区分、塩害条件、ケーブル種類、端末接続部規格、設備仕様を確認して選定します。
高圧ケーブル端末処理の施工手順
ここでは、端末処理の大きな流れを説明します。実際の剝ぎ取り寸法、端子圧縮条件、テープ巻数、チューブ位置などは製品ごとに異なるため、必ず使用する端末処理材の工法書に従います。

①作業計画と安全措置を行う
対象回路、ケーブル両端、接続機器、停電範囲を確認します。停電、開路、検電、放電、接地、誤投入防止、作業区画など、設備の作業手順に基づく安全措置を行います。
高圧ケーブル端末処理は、この記事を見ながら未経験者が実施する作業ではありません。必要な資格、技能認定、社内指名、監督体制を確認し、十分な技能を持つ作業者が施工します。
②ケーブルと端末処理材を照合する
ケーブル種類、心数、導体材質、導体断面積、絶縁体径、屋内・屋外区分、汚損条件、製品の使用期限と保管状態を確認します。部材不足や異なるサイズの混在がないことも施工前に照合します。
③ケーブルを段剝ぎする
工法書の寸法に従い、シース、金属遮へい層、外部半導電層、絶縁体、導体を順番に口出しします。各層を必要な位置で正しく終端させることで、端子、接地線、ストレスコーン、絶縁保護部を取り付ける空間を作ります。
④絶縁体表面を仕上げる
外部半導電層の剝ぎ残し、段差、切り傷、異物、導電性の粉などを残さないように処理します。主絶縁へ深い傷を付けたり、清掃後の表面を汚したりすると、界面へ局部電界やボイドが生じる原因になります。
⑤電界緩和・絶縁・接地・防水部を組み立てる
ストレスコーンや電界緩和チューブを所定位置へ取り付け、端子、絶縁保護部、接地線、ブラケットを組み立てます。屋外形では、雨水の浸入防止と沿面距離の確保も重要です。
⑥完成状態を検査する
端子の締付状態、相間距離、対地距離、端末部の位置、接地線、ブラケット、相表示、防水処理、傷、汚れを確認します。そのうえで、設計図書や保安規程に基づく絶縁抵抗、耐電圧などの竣工試験を実施します。
施工不良につながりやすいポイント
高圧ケーブルの端末部は、複数材料の境界が集中する部分です。小さな傷や汚れでも、電界と水分が重なることで長期的な弱点になる可能性があります。

絶縁体へ傷を付ける
外部半導電層を除去するときに主絶縁へ刃を入れすぎると、傷の先端へ電界が集中します。表面の研磨方向や仕上げ方法も、工法書と専用工具の指示に従います。
半導電層を残す、または切断端を荒らす
外部半導電層の剝ぎ残しや不規則な切断端は、電界緩和部との界面を乱します。反対に、除去してはいけない位置まで削ることも問題です。
異物や水分を挟み込む
導電性粉じん、油、汗、水分、清掃布の繊維などが界面へ残ると、部分放電や沿面漏れの起点になる可能性があります。清掃後の面へ不用意に触れないなど、作業環境を含めた管理が必要です。
接地線や遮へい処理が不完全
金属遮へい層と接地線の接続不良、素線切れ、締付不足は、遮へい機能と地絡保護へ影響します。接地方式は保護継電器やZCTの検出範囲にも関係するため、設計どおりに施工します。
端子へケーブル荷重を掛ける
曲げ半径不足、無理な引張、ブラケット位置不良などによって端子や端末本体へ荷重が掛かると、界面のずれや接続部の緩みにつながります。ケーブルは適切な曲げ半径と支持間隔で固定します。
端末処理部の保守・点検
JCAAの事故分析では、終端接続部の事故防止には施工技術と保守管理の両方が重要とされています。完成時に問題がなくても、設置環境によって水分、油、薬品、紫外線、オゾン、振動、温度、塩分、粉じんなどの影響を受けます。
日常・定期点検では、設備条件に応じて次のような点を確認します。
- 端末表面の汚れ、塩分、結露、水滴
- ひび割れ、変色、膨れ、収縮、ずれ
- 沿面放電やトラッキングの痕跡
- 端子の変色、過熱、緩み
- 接地線の断線、腐食、接続部の緩み
- ブラケット、スペーサー、ケーブル支持部の異常
- 雨水浸入、防水部、屋外端末の雨覆の状態
停電点検や診断を実施するときは、端末だけを切り離して考えず、ケーブル本体、両端末、接地方式、保護装置を含む線路全体として評価します。
高圧ケーブル端末処理と直線接続の違い
| 比較項目 | 終端接続部 | 直線接続部 |
|---|---|---|
| 目的 | ケーブルを機器や架空線へ接続する | ケーブル同士を途中で接続する |
| 導体 | 端子として外部へ引き出す | 接続管などで相互接続する |
| 絶縁構造 | 気中へ立ち上げ、必要な沿面距離を確保する | ケーブル本体に近い同軸構造を復元する |
| 主な注意 | 電界緩和、沿面絶縁、支持、防水、接地 | 導体接続、主絶縁復元、遮へい連続、防水 |
どちらも高い施工技能が必要ですが、直線接続ではケーブル本体と同じような同軸構造を現場で復元するため、端末処理とは別の施工要領と接続材料を使用します。
端末処理材を選ぶときの確認項目
- 定格電圧と適用規格
- CV、CVT、EM-CETなどのケーブル種類
- 単心、3心、トリプレックスの違い
- 銅導体・アルミ導体と導体断面積
- 絶縁体径、シース外径、外部半導電層の種類
- 屋内、屋外、耐汚損、耐塩害の区分
- 機器端子の位置、相間距離、対地距離、支持方法
- 遮へい層の接地方式と地絡保護方式
- 保管条件、使用期限、必要工具、施工技能
同じ「6.6kV用」でも、すべてのCVケーブルへ共通に使えるわけではありません。ケーブル仕様と端末処理材の適用表を照合し、施工要領書を含めて一式で確認することが重要です。
まとめ
- 高圧ケーブル端末処理は、機器接続だけでなく、電界緩和、絶縁、接地、防水、支持を成立させる処理である
- 6.6kV級CVケーブルは半導電層と金属遮へい層を持ち、遮へい層端部の電界集中を緩和する必要がある
- ストレスコーンは雷対策ではなく、遮へい層端部の電気的ストレスを分散する部分である
- 方式にはテープ巻形、プレハブ形、熱収縮・常温収縮形などがあり、適用ケーブルと環境に合わせて選ぶ
- 施工寸法と組立条件は製品ごとに異なるため、技能を持つ作業者が工法書と設計図書に従って施工する
高圧ケーブルの端末部は、一見すると端子とゴム部品を取り付けただけに見えるかもしれません。しかし内部では、導体接続、主絶縁、電界緩和、遮へい接地、防水、機械的支持が連続して成立しています。
端末部で異常が見つかったときは、表面だけを見るのではなく、ケーブル仕様、遮へい層、ストレスコーン、接地線、ブラケット、設置環境まで順番に確認しましょう。

