工場やプラントでは、水、空気、蒸気、薬液などの流量を連続的に測定しています。
流量の測り方には多くの方式がありますが、古くから広く使われているのが差圧式流量計です。配管の途中をオリフィスなどで絞り、その前後に生じる圧力差から流量を求めます。
差圧伝送器はレベル測定にも使われるため、「差圧を測れば、そのまま流量が分かる」と考えてしまうかもしれません。しかし実際には、差圧を作る一次要素、差圧を正しく伝える導圧管、差圧を測る伝送器、差圧から流量へ換算する演算がそろって、はじめて流量計測が成立します。
本記事では、オリフィスを代表例として、差圧式流量計の原理、流量と差圧の平方根関係、構成、一次要素の種類、液体・ガス・蒸気で異なる設置方法、保全上の注意点を図解します。
この記事で分かること
- オリフィス前後に差圧が生じる理由
- 流量と差圧が平方根の関係になる理由
- 一次要素、導圧管、マニホールド、差圧伝送器の役割
- オリフィス、フローノズル、ベンチュリ管の違い
- 液体・ガス・蒸気で導圧配管が変わる理由
- 直管長、閉塞、気泡、凝縮液、密度変化などの注意点

差圧式流量計とは
差圧式流量計とは、配管内に設けた絞り機構の上流側と下流側の圧力差を測定し、その差圧から流量を求める流量計です。
もっとも代表的な一次要素は、中央に円形の孔を開けた薄い金属板であるオリフィスプレートです。このほか、フローノズル、ベンチュリ管、コーンメータ、ウェッジメータ、平均ピトー管など、差圧を利用する複数の方式があります。
差圧式流量計は、流量計本体だけを配管へ取り付ければ完結する方式ではありません。一般に次の要素を組み合わせて使用します。
- 差圧を発生させる一次要素
- 上流側・下流側の圧力を取り出す圧力取出口と導圧管
- 2つの圧力の差を測る差圧伝送器
- 差圧を流量へ換算する平方根演算と流量演算
ようは差圧式流量計とは、流路を意図的に絞り、流れの強さを「圧力差」に置き換えて測る方式です。
差圧から流量を求める原理

①オリフィスで流路面積を小さくする
満管の配管を流れている流体がオリフィスへ近づくと、通過できる面積が小さくなります。
同じ時間に同じ量の流体が通過するには、狭い部分で流速が上がらなければなりません。これは、ホースの先を指で絞ると水の勢いが増す現象をイメージすると分かりやすいです。
②流速が上がると静圧が下がる
水平な配管内で損失をいったん無視すると、流速が上がった分だけ静圧は低下します。ベルヌーイの関係を利用した考え方です。
そのため、オリフィスより上流側の静圧を高圧側H、下流側の静圧を低圧側Lとして取り出すと、流れに応じた差圧が得られます。
差圧は次のように表します。
ΔP = PH − PL
流れがなければ、理想的には上流側と下流側の圧力差はありません。流量が増えるほど、絞り部を通過するときの流速変化が大きくなり、差圧も大きくなります。
③オリフィス直後で流れはさらに縮む
流体は、オリフィス孔を通過した瞬間に孔と同じ断面で真っすぐ流れるわけではありません。慣性によって下流側でさらに細くなり、最小断面の縮流部を形成します。
縮流部付近では流速が高く、静圧が低くなります。その後、流れが配管全体へ広がるにつれて静圧は一部回復します。
ただし、はく離や渦、摩擦によってエネルギーが失われるため、十分下流へ進んでも圧力は上流側と同じ値まで完全には戻りません。この戻らない圧力分を永久圧力損失と呼びます。
流量と差圧は平方根の関係

差圧式流量計で最も重要なのが、流量と差圧は単純な比例関係ではないという点です。
同じ流体、同じ配管、同じ一次要素、同じ温度・圧力などの条件を仮定すると、差圧は流量の2乗に比例します。
ΔP ∝ Q2
逆に、測定した差圧から流量を求めるときは、差圧の平方根を取ります。
Q ∝ √ΔP
例えば、最大流量時の差圧を100%とすると、流量と差圧の関係は次のようになります。
| 流量 | 差圧 |
|---|---|
| 100% | 100% |
| 50% | 25% |
| 25% | 6.25% |
| 10% | 1% |
流量が半分になると、差圧は半分ではなく4分の1です。流量が10%では、差圧はわずか1%になります。
このため低流量域では、差圧伝送器のゼロ点ずれ、配管振動、圧力脈動、導圧管内のわずかな液柱差などが、流量値へ目立って現れやすくなります。
実際の流量演算では平方根だけでなく、一次要素の口径比、流出係数、流体密度、気体・蒸気の膨張係数なども考慮します。差圧伝送器へレンジを設定しただけで、すべての流体を正確な流量へ換算できるわけではありません。
差圧式流量計の構成

一次要素
一次要素は、配管内に差圧を発生させる部分です。代表的なオリフィスプレートは、2枚のオリフィスフランジの間へ挟み込みます。
標準的な同心円オリフィスでは、上流側の孔縁に規定された鋭いエッジを持たせ、下流側を面取りします。向きを逆に取り付けたり、鋭いエッジが摩耗・欠損・付着物で変化したりすると、設計時の流出係数から外れて測定誤差につながります。
圧力取出口と元弁
オリフィスの上流側と下流側には、静圧を取り出す圧力取出口があります。上流側をH、下流側をLへ接続します。
圧力取出口の位置には、フランジタップ、コーナータップ、D・D/2タップなどの方式があります。どの位置でも自由に選べるわけではなく、採用する規格、一次要素、配管径、流量計算条件と一致させる必要があります。
元弁は、プロセス配管と導圧管を遮断するための弁です。導圧管や差圧伝送器を点検するときに使用します。
導圧管
導圧管は、上流側と下流側の圧力を差圧伝送器まで伝える配管です。
2本の導圧管は、できるだけ同じ長さ、同じ径、同じ温度条件にそろえます。片側だけが日射や熱源の影響を受けたり、片側だけに気泡や凝縮液がたまったりすると、差圧伝送器は流量による差圧と液柱差を区別できません。
流体に応じて連続した勾配を付け、気体を逃がすベント、液体を抜くドレン、凍結防止、詰まり対策などを設計します。
3バルブ・5バルブマニホールド
差圧伝送器の手前には、マニホールドを取り付けます。
3バルブマニホールドは、H側遮断弁、L側遮断弁、H/L間をつなぐ均圧弁の3つで構成されます。通常運転時はH側・L側遮断弁が開、均圧弁が閉です。
5バルブマニホールドでは、これにベント・テスト用の弁が加わります。校正器の接続、ベント、ドレンなどを行いやすくなります。
均圧弁は、運転中に常時開けて使う弁ではありません。開くとH側とL側がつながり、差圧はほぼゼロになります。また、遮断弁と均圧弁の操作順序を誤ると、差圧センサへ片圧を加えたり、高温・高圧流体を校正口へ導いたりするおそれがあります。操作は使用するマニホールドと伝送器の説明書、設備の作業手順に従います。
差圧伝送器
差圧伝送器は、H側とL側へ加わる圧力の差を電気信号へ変換します。
伝送器が直接測っているのは、あくまでPaやkPaで表す差圧です。伝送器内部またはPLC・DCS・流量演算器で平方根演算と補正を行い、m³/h、kg/h、t/hなどの流量へ換算します。
出力には4~20mA、HART、フィールドバスなどが使われます。平方根演算を伝送器側とDCS側の両方で行うと、誤った値になるため、どこで演算しているかを計装ループ図やパラメータで確認することが重要です。
主な一次要素の種類

オリフィスプレート
オリフィスプレートは、中央に円形孔を開けた薄い板です。構造が単純で規格化されており、比較的安価で交換しやすいことから広く使われています。
一方、下流側ではく離と渦が大きく生じるため、永久圧力損失は比較的大きくなります。鋭いエッジの摩耗、腐食、付着物、孔径変化にも注意が必要です。
フローノズル
フローノズルは、入口側を滑らかに絞り、短いスロートへ流体を導く一次要素です。
薄い鋭縁だけで流れを絞るオリフィスより、入口形状が丈夫で、高流速や高温・高圧の蒸気などに使われます。圧力損失、価格、設置寸法は、一般にオリフィスとベンチュリ管の中間的な位置づけです。
ベンチュリ管
ベンチュリ管は、緩やかな収縮部、一定径のスロート、緩やかな拡大部で構成されます。
拡大部で圧力を回復しやすいため、永久圧力損失を小さく抑えられます。段差や鋭いエッジが少なく、固形物を含む流体に適用されることもあります。
その反面、全長が長く大型になりやすく、製作・据付コストも高くなります。
| 一次要素 | 主な特徴 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| オリフィス | 単純、安価、交換しやすい | 圧力損失が比較的大きい、エッジ管理が必要 |
| フローノズル | 入口が丈夫、高流速・蒸気で使われる | オリフィスより高価、形状管理が必要 |
| ベンチュリ管 | 圧力損失が比較的小さい | 大型で高価、設置スペースが必要 |
この比較は一般的な傾向です。実際の圧力損失、必要直管長、精度、適用流体は、口径比、レイノルズ数、製品形状、規格、校正条件によって変わります。
液体・ガス・蒸気で導圧配管が変わる

差圧伝送器は、H側とL側に加わる圧力の差を忠実に測ります。つまり、導圧管の中へ余計な液柱差や気柱差が生じると、それも差圧として測定してしまいます。
液体の場合
液体では、差圧伝送器を圧力取出口より下へ設置する構成が代表的です。圧力取出口は沈殿物を拾いにくい配管側面に設け、導圧管を液体で満たし、気泡が上方のプロセス配管へ戻りやすくします。
導圧管に高い部分や逆勾配があると、そこへ気泡がたまります。片側だけに気泡が入ると液柱差が変わり、ゼロ点ずれや指示変動の原因になります。
乾燥ガスの場合
乾燥ガスでは、圧力取出口を配管上部または側面に設け、差圧伝送器を圧力取出口より上へ設置する構成が代表的です。導圧管内で少量の液が凝縮しても、連続した勾配によってプロセス配管へ戻しやすくします。
湿りガスや凝縮しやすいガスでは、凝縮液だまりの扱いが特に重要です。流体条件によってはドレンポットなどの専用構成を採用します。
蒸気の場合
蒸気では、圧力取出口を配管側面に設け、差圧伝送器を取出口より下へ配置する構成が代表的です。蒸気を高温のまま差圧伝送器へ直接導くのではなく、一般に導圧管内へ凝縮水を作り、その水柱を介して圧力を伝えます。
H側とL側の導圧管を同じ高さ・温度条件にそろえ、両側の凝縮水の液柱高さを等しくすることが重要です。必要に応じてコンデンスポットを設けます。
片側だけ封液が減ったり、液柱高さが変わったりすると、その差が流量による差圧へ重なって誤差になります。立ち上げ後は両側が安定するまで指示が落ち着かないこともあります。
図の配置は代表例です。取出口の向き、伝送器の高さ、ベント・ドレン、コンデンスポットの要否は、流体の相、温度、圧力、凍結性、腐食性、設計基準、製品説明書に従って決定します。
設置時の重要ポイント
十分な直管部を確保する
差圧式流量計は、一次要素へ流れ込む速度分布の影響を受けます。
上流にエルボ、ティー、バルブ、レデューサ、拡大管などがあると、偏流や旋回流が生じます。速度分布が設計条件から外れると、同じ流量でも差圧が変わります。
必要な直管長は、一次要素の種類、口径比、上流障害物の種類と組み合わせ、流れ調整器の有無によって変わります。「上流10D、下流5D」のような一律の数値だけで判断せず、採用する規格とメーカー資料で確認します。
配管を満管にする
ISO 5167に基づく標準的な差圧流量測定は、円形配管が流体で満たされ、単相、亜音速、非脈動に近い流れであることを前提とします。
液体配管へ気泡が大量に混入したり、気体中に液滴が多く含まれたり、配管が満管にならなかったりすると、密度や流れの状態が前提から外れます。
オリフィスの向きと状態を確認する
標準的なオリフィスプレートには上流側・下流側の向きがあります。流れ方向の刻印、タブ、図面を確認して取り付けます。
定期点検では、孔径、鋭いエッジ、平面度、腐食、浸食、付着物、変形を確認します。ガスケットが孔へはみ出すと流れを乱すため、芯ずれにも注意が必要です。
流体の密度変化を考慮する
差圧と流量の関係には密度が含まれます。液体の密度がほぼ一定なら設計密度で扱える場合もありますが、温度や組成が大きく変わる流体では誤差になります。
気体や蒸気は、圧力・温度によって密度が大きく変わります。標準状態換算流量や質量流量が必要な場合は、圧力・温度を測定して密度補正を行う流量演算器やDCS演算を使用します。
脈動と振動を避ける
往復動ポンプやコンプレッサの近くでは、圧力と流量が周期的に変動します。差圧は流量の2乗に関係するため、単純な差圧平均から正しい平均流量を得られない場合があります。
導圧管の共振や配管振動も指示変動の原因になります。必要に応じて設置位置、配管支持、ダンピング、パルセーションダンパなどを検討します。
保全で多い異常と確認ポイント
導圧管の閉塞
導圧管は細いため、スラッジ、腐食生成物、結晶、凝固物、凍結などで詰まることがあります。
片側が閉塞すると、流量変化に対する圧力伝達が遅れたり、一定値に張り付いたりします。両側が同時に同程度詰まるとは限らないため、ゼロ点だけを見て正常と判断できません。
気泡・凝縮液・封液の偏り
液体の導圧管へ気泡が入り、ガスの導圧管へ凝縮液がたまり、蒸気の両側封液高さが変わると、液柱差が変化します。
運転停止や周囲温度変化のあとにゼロ点がずれる場合は、導圧管のベント・ドレン、勾配、保温、トレース、封液状態を確認します。
漏れ
継手、元弁、マニホールド、ベント・ドレンプラグから漏れがあると、正しい圧力が伝わりません。危険流体では安全上の問題にもなります。
微小な外部漏れだけでなく、均圧弁や遮断弁の内部漏れも差圧を小さくする原因になります。
低流量域の指示ふらつき
低流量では発生差圧が非常に小さくなるため、ゼロ点ノイズを平方根演算すると流量指示がふらつきやすくなります。
低流量カットオフを設定すると、一定以下の差圧を流量ゼロとして扱えます。ただし、本当に必要な低流量まで切り捨てないよう、プロセス要求と伝送器仕様を確認して設定します。
平方根演算の二重設定・未設定
差圧伝送器をリニア出力にしてDCSで平方根演算する構成と、伝送器側で平方根出力にする構成があります。
両方で平方根演算すると二重演算になり、どちらでも行わなければ差圧値を流量として表示してしまいます。ループチェックでは、0%、25%、50%、100%流量に相当する差圧を使って演算場所まで確認します。
差圧式流量計のメリット
- 構造と理論が確立され、規格や実績が多い
- 液体、気体、蒸気へ適用できる
- オリフィスは構造が単純で比較的安価
- 差圧伝送器を遠隔へ設置しやすい
- 一次要素と伝送器を用途に合わせて組み合わせられる
- 高温・高圧流体にも対応する構成を取りやすい
差圧式流量計のデメリット
- 絞りによる永久圧力損失が生じる
- 低流量では差圧が小さく、測定可能範囲に限界がある
- 直管長と流れの速度分布の影響を受ける
- 導圧管の閉塞、気泡、凝縮液、凍結、漏れの管理が必要
- 密度変化が流量換算へ影響する
- 一次要素、取出口、導圧管、伝送器、演算の条件を一致させる必要がある
差圧式レベル計との違い
差圧式流量計と差圧式レベル計は、どちらもH側とL側の圧力差を差圧伝送器で測定します。しかし、差圧が生じる原因と演算方法が異なります。
| 差圧式流量計 | 差圧式レベル計 | |
|---|---|---|
| 差圧の原因 | 絞り部を流れるときの速度変化 | 液面高さによる静水圧 |
| 基本関係 | Q ∝ √ΔP | 一定密度ならレベル ∝ ΔP |
| 主な付属要素 | オリフィスなどの一次要素 | タンク取出口、ウェットレグ、シールなど |
| 代表的な誤差要因 | 速度分布、密度、一次要素、導圧管 | 密度、封液、タンク圧、ゼロサプレッション |
差圧伝送器の外観が同じでも、流量計のレンジ計算をレベル計へ流用したり、その逆を行ったりすることはできません。
差圧式流量計を選定するときの確認項目
- 流体の種類、相、組成、密度、粘度
- 常用・最小・最大流量
- 常用・設計圧力と温度
- 配管口径、材質、スケジュール、内径
- 許容できる永久圧力損失
- 上流・下流の直管部と配管レイアウト
- 必要精度と測定可能範囲
- 付着、スラリー、腐食、浸食、凝縮、凍結の有無
- 体積流量、標準体積流量、質量流量のどれが必要か
- 圧力・温度補正の要否
- 出力信号、電源、防爆、周囲環境
- ベント、ドレン、校正、一次要素の点検方法
差圧式流量計は、一次要素と伝送器を別々に選ぶのではなく、配管・流体・流量演算・保全方法まで含めた一つの計測システムとして設計することが重要です。
まとめ
- 差圧式流量計は、絞り機構の上流・下流に生じる差圧から流量を求める
- 上流側をH、下流側をLとして差圧伝送器へ接続する
- 差圧は流量の2乗に比例し、流量は差圧の平方根に比例する
- 差圧伝送器が直接測るのは差圧であり、一次要素の仕様と流量演算が必要
- オリフィスは単純で安価だが、永久圧力損失は比較的大きい
- ベンチュリ管は圧力損失を抑えやすいが、大型で高価になりやすい
- 液体は気泡、ガスは凝縮液、蒸気は封液高さの不一致を避ける
- 直管長、満管、密度補正、導圧管閉塞、平方根演算の設定を確認する
差圧式流量計は、仕組みそのものは「絞って圧力差を測る」という単純な方式です。しかし、実際の精度は一次要素、流れの状態、導圧配管、差圧伝送器、演算設定のすべてに左右されます。
指示がおかしいときは、差圧伝送器だけを疑うのではなく、H/L配管、導圧管内の相状態、マニホールド、オリフィス、密度条件、平方根演算まで順番に確認しましょう。

