工場やプラントの配管には、電磁流量計、渦流量計、超音波流量計など、さまざまな方式の流量計が取り付けられています。
その中でもコリオリ式流量計は、流体の体積ではなく、配管を通過する質量を直接測定できる流量計です。薬品の充填量、原料の配合、燃料の受け払いなど、重量を基準に管理したい工程で使用されます。
しかし、外から見ると太い金属ケースと変換器があるだけなので、「内部の管を振動させて、なぜ質量流量が分かるのか」はイメージしにくいかもしれません。
本記事では、コリオリ式流量計の役割、測定管と検出器の構造、位相差から質量流量を求める原理、密度・温度測定、種類、選定、気泡や配管振動、ゼロ点調整の注意点を図解します。
この記事で分かること
- コリオリ式流量計が直接測定する量
- 測定管、ドライバ、ピックオフ、温度センサの役割
- 管の振動と入口・出口側の時間差から質量流量を求める原理
- 共振周波数から密度を測定する仕組み
- 曲管形・直管形、単一管形・二重管形の違い
- 気泡、配管振動、取付姿勢、ゼロ点調整の注意点

コリオリ式流量計とは
コリオリ式流量計とは、振動する測定管を流体が通過するときに生じるコリオリ力を利用し、質量流量を連続測定する流量計です。コリオリ質量流量計、コリオリ流量計とも呼ばれます。
質量流量とは、単位時間に通過する流体の質量です。kg/hやt/hなどで表します。一方、体積流量はm³/hやL/minのように、単位時間に通過する体積を表します。
液体や気体の体積は、温度や圧力、密度の変化によって変わります。これに対して質量そのものは、温度によって膨張しても変わりません。
例えば、同じ1Lの液体でも密度が違えば重量は異なります。体積流量計で質量を求める場合は、体積流量に密度を掛ける必要があります。
コリオリ式では、測定管のねじれを利用して質量流量を直接検出します。そのため、外部の密度計を使って質量へ換算する方式とは考え方が異なります。
ようはコリオリ式流量計とは、流れている流体を配管の中で連続的に「重量で量る」ための流量計と考えると分かりやすいです。
コリオリ式流量計の主な役割
- 液体や気体の質量流量を直接測定する
- 一定質量ずつ原料や製品を充填・配合する
- 流入量と流出量を比較し、工程の収支を管理する
- 機種に応じて密度や温度、体積流量、濃度などを出力する
食品や薬品では、製品をLではなくkgで管理する工程があります。密度が温度や配合によって変化する場合でも、質量を直接測定できれば充填量や投入量を安定させやすくなります。
また、密度を同時に測定できる機種では、質量流量を密度で割ることで体積流量も演算できます。温度と密度の関係を利用し、濃度や比重を演算できる製品もあります。
密度・温度・濃度などの出力範囲と精度は製品によって異なります。コリオリ式だから、すべての機種で同じ変数を同じ精度で測定できるわけではありません。
コリオリ式流量計の構成

コリオリ式流量計の外観や測定管形状は製品によって異なります。ここでは、原理を理解しやすい二重曲管形を代表例として見ていきましょう。
測定管とマニホールド
配管から流入した流体は、入口側マニホールドで2本の測定管へ分かれます。測定管を通過した流体は、出口側マニホールドで合流して下流配管へ流れます。
測定管は流体を通すだけでなく、流量を検出するばねのような役割も持っています。管の材質、肉厚、形状、温度が変われば、振動特性も変化します。
ドライバ
ドライバは、測定管を固有振動数付近で連続的に振動させる部分です。代表例では、2本の測定管の間に配置したコイルと磁石によって、互いに反対方向へ振動させます。
測定管を振動させなければ、流体が通過しても検出に必要なコリオリ力によるねじれは現れません。ドライバは測定原理を成立させるための中心部品です。
入口側・出口側ピックオフ
ピックオフは、測定管の入口側と出口側に1組ずつ配置され、管の振動を電気信号として検出します。
代表的な電磁式ピックオフでは、一方の管へ磁石、もう一方の管へコイルを取り付けます。2本の管が相対的に動くことで、振動に対応した交流信号が発生します。
変換器は2つのピックオフ波形を比較し、波形の時間差や位相差から質量流量を演算します。検出方法の詳細はメーカーや機種によって異なります。
温度センサ
測定管には温度センサが取り付けられています。測定管の弾性は温度によって変化するため、変換器は温度を使って振動特性を補正します。
温度は補正だけでなく、機種によって測定値として外部へ出力できます。ただし、流量計の温度測定は主に測定管温度を捉えるものであり、専用温度計と同じ設置条件や応答になるとは限りません。
変換器
変換器は、ドライバの振動を制御し、ピックオフ・温度センサの信号から質量流量、密度、温度などを演算します。
センサと変換器を一体化した一体形と、ケーブルで離して設置する分離形があります。出力は4~20mA、パルス、HART、フィールドバス、Modbusなど、製品仕様に応じて選びます。
質量流量を測定する原理

①測定管を振動させる
変換器がドライバへ電流を流すと、測定管は固有振動数付近で振動します。二重管形では、2本の測定管を互いに近づけたり離したりする方向へ振動させる構造が代表的です。
この振動は実際には小さく高速で、外から大きく揺れて見えるものではありません。図では原理を分かりやすくするため、変位を誇張しています。
②流量ゼロでは2つの波形がそろう
測定管の中が流体で満たされ、流量が完全にゼロであれば、入口側と出口側は対称に振動します。
そのため、入口側ピックオフと出口側ピックオフが検出する波形は、理想的には同じタイミングになります。この状態が流量ゼロの基準です。
③流体が流れると測定管がねじれる
振動している測定管へ流体が流れると、流体にはコリオリ力が作用します。
曲管形の代表例では、流体が振動の中心へ近づく入口側と、中心から離れる出口側で、測定管へ作用する力の向きが反対になります。その結果、測定管は振動しながらわずかにねじれます。
流れる質量が多いほどコリオリ力が大きくなり、入口側と出口側の振動のずれも大きくなります。
④時間差から質量流量を演算する
測定管がねじれると、入口側と出口側のピックオフ波形に時間差が生じます。変換器は、この時間差を校正係数へ当てはめて質量流量へ変換します。
時間差の大きさは質量流量に対応し、どちらの波形が先行するかは流れ方向の判別に使われます。実際の演算では、測定管の剛性や温度、センサ固有の校正係数も考慮されます。
ここで重要なのは、流体が管を押す力そのものを1個の荷重センサで測っているのではなく、振動する測定管の入口側と出口側の動きを比較しているという点です。
密度と体積流量を測定する仕組み

測定管は、管自体と内部の流体を合わせた一つの振動系として動きます。同じ測定管であれば、内部の流体密度が高くなるほど振動する質量が増え、固有振動数は低くなります。
振動の基本関係は、ばね定数をk、振動する質量をmとすると、固有振動数fがおおよそ√(k/m)に比例すると考えれば理解しやすいです。
変換器は測定管の共振周波数と校正データから流体密度を演算します。ただし、測定管の剛性は温度でも変わるため、温度センサの値を使って補正します。
密度が分かれば、次の関係から体積流量を求められます。
体積流量 = 質量流量 ÷ 密度
つまり、質量流量と密度は同じ測定管の振動から求めますが、質量流量は主に入口・出口側の時間差、密度は主に共振周波数という別の情報を使っているのです。
測定管の主な種類

コリオリ式流量計には、さまざまな測定管形状があります。外観だけで性能を決めつけず、流体性状、圧力損失、洗浄性、口径、必要精度を確認して選定します。
| 分類 | 主な特徴 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 曲管形 | U字、Ω字、ループ形など。管の変形を得やすく、広く使用される | 設置スペース、液抜け、圧力損失、付着 |
| 直管形 | 流路が直線的で、洗浄性や液抜けを重視する用途に向く製品がある | 外部振動、配管応力、ゼロ安定性、材質 |
| 二重管形 | 流れを2本へ分け、2本を反対方向に振動させる代表的な構造 | 流路分割、詰まりやすさ、圧力損失 |
| 単一管形 | 分流部を持たず、流路を単純化できる製品がある | 振動のバランス方法、設置条件、口径 |
「曲管形は必ず高精度」「直管形は必ず圧力損失が小さい」と一律には判断できません。測定管の本数、径、肉厚、曲げ形状、流量レンジによって性能は変わります。
コリオリ式流量計のメリット
- 質量流量を直接測定できる
- 液体、気体、スラリーなど幅広い流体へ適用できる製品がある
- 質量流量、密度、温度などを一台で測定できる
- 流路内に回転羽根や容積式のロータを持たない
- 流速分布の影響を受けにくく、長い直管長を必要としない製品が多い
- 高精度な充填、配合、受け払いに利用できる
電磁流量計のように液体の導電率を必要とせず、超音波式のように音の伝わり方だけで流量を求める方式でもありません。適切な材質と仕様を選べば、導電性のない液体や気体も測定できます。
一方で、適用できる流体、口径、圧力、温度、防爆、サニタリー仕様は製品によって異なります。「原理的に測れる」と「その製品を安全に使用できる」は分けて考える必要があります。
デメリットと選定時の注意点
価格・重量・圧力損失
コリオリ式流量計は、一般にセンサ構造と信号処理が複雑で、他方式より初期費用が高くなる場合があります。大口径になるほど本体が重く、設置スペースも必要です。
測定管が細い、長い、曲がっている製品では圧力損失が大きくなることがあります。流量レンジだけでなく、流体粘度と許容圧力損失を含めてサイジングします。
気泡や二相流
液体中に気泡が混入すると、測定管内の密度や減衰が不均一になり、振動が不安定になります。指示値がばらつく、ゼロ点が移動する、密度が低く表示される、測定が停止するなどの原因になります。
気泡への強さを高めた製品や診断機能もありますが、一般的な単相流用コリオリ式流量計で、気液二相流を常に正確に測れると考えてはいけません。
液体配管では流量計を常に満液にし、上流側で気体が析出しない圧力を確保します。エアポケットができる位置や、ポンプ吸込側の低圧部は避けます。
外部振動・配管応力・相互干渉
コリオリ式流量計は、測定管の微小な振動を検出しています。近くのポンプ、圧縮機、往復動機器、脈動、配管振動が測定周波数へ重なると、ゼロ点や指示が不安定になることがあります。
複数のコリオリ式流量計を同じ支持構造へ近接設置すると、振動が伝わって相互干渉する場合もあります。
また、流量計本体を使って配管のずれを無理に引き寄せると、測定管へ応力が加わります。配管を正しく芯出しし、流量計ではなく前後配管をメーカー指定位置で支持します。
設置とゼロ点調整のポイント

流体と機種に合った取付姿勢を選ぶ
取付姿勢は、曲管形・直管形、液体・気体、固形分の有無、洗浄や液抜きの必要性によって異なります。
液体では気体がたまらない姿勢、気体では凝縮液がたまらない姿勢、スラリーでは固形分が沈降しにくい姿勢を選びます。流向矢印と変換器の向きも含め、必ず対象機種の取扱説明書を確認してください。
前後配管を支持し、本体へ応力を加えない
流量計前後の配管を支持し、フランジへ偏心、ねじれ、過大な荷重を加えないようにします。センサケースを直接支持してよいかどうかは製品によって異なるため、メーカー図面に従います。
流量計は流速分布の影響を受けにくい方式ですが、これは配管施工を自由にしてよいという意味ではありません。異径配管、弁、ポンプ、振動源との距離は取扱説明書で確認します。
ゼロ点調整は満液・完全停止で行う
ゼロ点調整を行うときは、測定管を実際の流体で満たし、流量計近くの弁で流れを完全に止めます。一般には下流側遮断弁で流れを止められる配管が使いやすくなります。
流体が動いている、気泡がある、温度が安定していない、配管応力が変化している状態でゼロ点を取ると、その誤差をゼロとして記憶してしまいます。
指示が不安定だからといって、原因を調べずに何度もゼロ点調整を行わないでください。まず、弁の内漏れ、気泡、液の揺れ、配管振動、付着、温度変化、相互干渉を確認します。
現場での点検・保全
- ゼロ流量時の指示とゼロ安定性
- 密度・温度・ドライブゲインなどの診断値
- 気泡、スラグフロー、空管警報の有無
- 配管・フランジ・センサケースからの漏れ
- 腐食、摩耗、付着、閉塞による測定管特性の変化
- 配管サポート、ボルト、ケーブル、接地の状態
- 変換器の自己診断、イベント履歴、出力信号
測定管へ付着や固着が起こると、振動する質量や管の剛性が変わり、ゼロ点・密度・流量へ影響することがあります。洗浄方法と薬品は接液部材質を確認して選びます。
腐食や摩耗によって測定管の肉厚が変化すると、振動特性だけでなく耐圧安全性にも関わります。診断機能が正常でも、メーカーが定める点検や校正をすべて省略できるとは限りません。
流量計を取り外す前には、配管を停止し、圧力を抜き、危険流体を排出・洗浄してください。高温、毒性、腐食性、可燃性流体では、設備の作業手順と保護具、防爆上の条件を守ります。
コリオリ式流量計を一言でいうと
コリオリ式流量計とは、測定管を振動させ、流体が流れたときに入口側と出口側へ生じる時間差から質量流量を直接求める流量計です。
まとめ
- コリオリ式流量計は、振動する測定管に生じるコリオリ力を利用して質量流量を直接測定する。
- 代表的な構造は、測定管、マニホールド、ドライバ、入口・出口側ピックオフ、温度センサ、変換器で構成される。
- 流量ゼロでは入口・出口側の振動波形がそろい、流体が流れると管がねじれて時間差が生じる。
- 共振周波数から密度を測定し、質量流量を密度で割ることで体積流量も演算できる。
- 曲管形・直管形、単一管形・二重管形があり、用途と流体条件に応じて選定する。
- 気泡、外部振動、配管応力、付着、誤ったゼロ点調整は測定誤差の原因になる。
- 設置姿勢、支持方法、ゼロ点調整、保全作業は対象機種の取扱説明書に従う。

