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【防爆構造】防爆記号、規格、防爆エリア(ゾーン・危険場所)について

低圧・制御・FA
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防爆について

工場やプラントにおいては、可燃性ガス可燃性液体の蒸気が存在します。

これらガスが操業中や作業中に大気へと放出・漏洩すると、空気と混合することによって爆発性雰囲気を形成し、これに加えて「爆発を起こすために十分な着火エネルギーを持つ点火源」が、同時に存在することによって爆発・火災が発生します。

つまり可燃性ガス・蒸気、空気、点火源について以下のような関係があると言えるでしょう。

可燃性ガス・蒸気 + 空気 + 点火源 = 爆発・火災

こうなると可燃性ガス・蒸気、空気、点火源がなくなれば良いと思えますが、実際の製造現場から可燃性ガスや空気を取り除くというのは、現実的に困難と言えます。となると残った最後の要素である「点火源」を排除しようと考えるのが自然流れとなります。

防爆とはこの点火源を取り除くための技術的対策を指し、そのために防爆構造と呼ばれる電気機器の規格を定めています。

防爆構造の目的と意味

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構造規格・整合指針・海外防爆規格について

点火源を発生させない技術的対策として防爆が存在するのですが、日本国内において主な防爆規格は二種類あります。

  • 工場電気設備防爆指針(ガス蒸気防爆2006) 通称:構造規格
  • 国際整合防爆指針(Ex2015) 通称:整合指針

これとは別に、以下も規格として扱われています。

  • 国際整合技術指針(Ex2018)  ←新しい整合指針
  • 工場電気設備防爆指針(粉じん防爆 1982)

Ex2018については資料が思うように集まらないため、整合指針は解説が豊富なEx2015を説明していきます。

工場電気設備防爆指針(ガス蒸気防爆2006) 通称:構造規格

まず防爆構造電気機械器具について厚生労働大臣定めた唯一の規格として、「電気機械器具防爆構造規格」と呼ばれる規格が存在します。

そして可燃性ガスなどについて示された工場電気設備防爆指針(ガス蒸気防爆2006)がこの規格の検定基準であり、いわゆる構造規格と呼称されているものです。昭和44年の高度経済成長期に定められ、現在まで改正されながら運用されています。

ちなみに粉塵防爆について示された工場電気設備防爆指針(粉塵防爆1982)も「電気機械器具防爆構造規格」の検定基準に含まれています。

ベテランの技術者にはこちらの方が親しみがあり、例えば電気機器に貼られた検定証に「d2G4」などと印字されているものが該当します。

国際整合防爆指針(Ex2015) 通称:整合指針

上記の工場電気設備防爆指針(ガス蒸気防爆2006)はあくまで国内で定められて規格であり、国際規格に準じた基準が必要となりました。

もともとこれには 「電気機械器具防爆構造規格」に基づく「技術的基準」が用いられていましたが、平成22年に廃止され、これに代わり国際整合防爆指針2008、そして平成27年に国際整合防爆指針2015(Ex2015)として新たな基準として運用されているのが整合指針になります。

おおむね構造規格と変わりませんが、一部の防爆構造の適用範囲が異なるなどの差異があります。電気機器に貼られた検定証には、例えば「Ex d ⅡB T4 X」などと印字されているものが該当するでしょう。

ちなみに国際整合防爆指針2018(Ex2018)が現在では新規検定として

追加されているようです。(資料を手に入れてないため割愛します)

ひとまず規格が複数存在するため、公益社団 法人産業安全技術協会(TIIS)で新規検定が行われている防爆指針を4つ並べます。

  1. 国際整合技術指針(Ex2018)            ←資料不足につき今回は触れず
  2. 国際整合技術指針(Ex2015)            ←今回述べる、いわゆる整合指針
  3. 工場電気設備防爆指針(ガス蒸気防爆 2006)       ←今回述べる、いわゆる構造規格
  4. 工場電気設備防爆指針(粉じん防爆 1982)        ←粉塵防爆関係で今回は触れず

日本国内のガス蒸気防爆では、構造規格と整合指針のどちらかの検定を受けており、ユーザー側で使用する分にはどちらの規格で認証されていても問題ありません。

逆に言えば、これら規格に認証されていなければ、国内での使用は出来ません。たとえは国際規格であるIECEx、アメリカのUL、ヨーロッパのATEXなど防爆について定められている規格で認証されていても、関係なく日本では使用できません。

構造規格・整合指針・海外防爆規格について

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危険場所の分類

可燃性物質を取り扱う工場において、大気中に放出または漏洩する可燃性ガス・蒸気と空気が混合して爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所のことを「危険場所」と呼びます。

ガス蒸気防爆においては、危険度が高いエリアから順にゾーン0(0種場所)、ゾーン1(1種場所)、ゾーン2(2種場所)の3つに分けられます。また今回は触れませんが、粉塵防爆ではゾーン20、ゾーン21、ゾーン22の3つに分類されます。

一つずつ見ていきましょう。

ゾーン0(0種場所)

爆発性雰囲気が通常状態において、連続して又は長時間にわたって、 もしくは頻繁に存在する場所を指す。容器内の引火性液体の液面付近 などが該当します。イラストにあるように地下タンクの内部、開放タンクの液面付近などがゾーン0になります。

防爆構造としては構造規格と整合指針の双方において、本質安全防爆構造(整合指針ではia)のみが使用可能です。

ゾーン0(0種場所)について

ゾーン1(1種場所)

通常の状態において、爆発性雰囲気をしばしば生成する可能性がある場所を指します。

点検や作業などで爆発性ガスをしばしば放出する開口部、爆発性ガスが通常の使用状態でも集積する恐れのある場所などが該当します。

使用できる防爆構造としては、本質安全防爆構造、耐圧防爆構造、内圧防爆構造、油入防爆構造が使用可能です。

安全増防爆構造整合指針においてのみ使用できるとされ、構造規格の方では使用不可となっています。

また油入防爆構造は本質安全防爆構造、耐圧防爆構造、内圧防爆構造に比べて防爆性が脆弱である点が認められるため、選定には注意が必要かもしれません。(参照:2012,労働安全衛生総合研究所技術指針 ユーザーのための工場防爆設備ガイド p42)

ゾーン1(1種場所)について

ゾーン2(2種場所)

通常の状態において、爆発性雰囲気を生成する可能性が小さく、生成した場合でも短時間しか持続しない場所を指します。

具体的には部材などの劣化に よって爆発性ガスが漏洩、またはゾーン1と隣接する室内で爆発性雰囲気がまれに侵入する場所などが該当します。

ゾーン2では国内で認証されたすべての防爆構造が適用可能です。

ゾーン2(2種場所)について

 

危険場所については以上です。各ゾーンの区分けについては、各工場や事業場で決定されると思いますので、設計者は防爆機器の選定時によく確認しましょう。

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防爆構造について

ここまで防爆や危険場所について述べてきましたが、防爆構造自体にも分類があります。先述していますが、各危険場所に適用できる防爆構造には指定がありますので、よく確認しましょう。

耐圧防爆構造

容器が内部に侵入した爆発性ガスの内部爆発に対して、損傷を受けることなく耐え、かつ容器内のすべての接合部または構造上の開口部を通して、外部の爆発性雰囲気へと火災を生ずることない防爆構造を指します。

ポンプや撹拌機などプラントでよく使用される動力機器、他にも現場のタンクや配管に設置するレベル計や流量計などの計装機器、様々な機器に採用されている防爆構造です。

内部で着火源が発生して爆発が起きても、それによって容器が破損したり、外部へと爆発が波及することがないような堅牢な構造を有しているんですね。

耐圧防爆構造について

安全増防爆構造

通常時にはアーク又は火花を発生することのない電気機器に適用する ものであって、過度な温度の可能性並びに異常なアーク及び火花の発生の可能性に対して、安全性を増加する手段が講じられた防爆構造を指します。

こちらも多くの機器に使用されている防爆構造です。現場で機器の操作を行うコントロールボックスに使用される場合、点火源となるため押釦スイッチの部分のみ耐圧防爆構造になりますので注意しましょう。

もう1点注意として、構造規格と整合指針で適用場所が異なる点を挙げておきます。構造規格(工場電気設備防爆指針、つまりガス蒸気防爆2006)で安全増防爆構造はゾーン2のみの適用ですが、整合指針においてはゾーン1にも適用できるとされています。

防爆性能は高くないため、上記の点も踏まえると安全増防爆構造はゾーン2に使用する機器と認識しても良いかもしれません。

内圧防爆構造

容器内の保護ガス圧力を外部雰囲気の圧力を超える値に保持すること、又は容器内のガス又は蒸気の濃度を爆発下限界より十分に低いレベルに希釈することによって、防爆性能を確保する防爆構造を指します。

通風式、希釈式、封入式、密封式が存在します。爆発性ガスの容器内への侵入を防ぐ防爆構造で、また内部に爆発性ガスの放出源がある場合、爆発下限界以下になるよう保護ガスを供給し濃度を下げるることで防爆性を維持します。

窒素などの保護ガスは外圧より常に50Pa(パスカル)以上高く保つように決められており、盤本体が保護ガスの圧力に耐えうる強度を持つようになっています。またこの保護ガスの圧力が下がった際には警報を出したり、電気機器の運転を停止するなどの保護装置も同時に必要です。

あまり数として多い印象は受けませんが、危険場所で使用される制御盤などに適用される防爆構造になります。

内圧防爆構造について

油入防爆構造

電気機器の電気火花又はア-クを発する部分を油中に納め、油面上に存在する爆発性ガスに引火するおそれがないようにした防爆構造を指します。

油によって電気絶縁爆発防止の両方を行っており、構造規格と整合指針ともにゾーン1での使用できると定めています。

ただし先のゾーン1の項目でも触れた通り、油入防爆構造は本質安全防爆構造、耐圧防爆構造、内圧防爆構造に比べて防爆性が脆弱である点を容認して使用しましょう。

労働安全衛生総合研究所技術指針で「油の劣化若しくは漏洩又は過大電流開閉時の防爆性に不安がある」 とのことで、ゾーン2のみの適用が推奨されています。(参照:2012,労働安全衛生総合研究所技術指針 ユーザーのための工場防爆設備ガイド p42)

また油を容器内に使用していることから保守性も悪いと言えます。

本質安全防爆構造

正常時及び事故発生時の電気火花、又は、高温部により爆発性ガスに点火しないことが、公的機関において試験その他によって確認された防爆構造を指します。

本質安全防爆構造は非危険場所に設置した制御盤内などに、安全保持器(バリアユニット)を用意し、現場側の機器と接続することで構成されます。安全保持器やバリアユニットからは微弱な電流しか流れないため、放出エネルギーが小さく点火源にならないことで防爆としています。

この原理から分かる通り、全ての防爆構造の中でもっとも防爆性が高い構造になります。通常時・故障時、発生するアークが可燃性ガスの着火エネルギー以下となり、さらに温度も発火温度以下になることからこれは分かると思います。

また本質安全防爆構造は整合指針において、iaとibという2種類に細分化されています。

  • ia:数えられる故障を2つまで考慮した機器(ゾーン0,1,2に使用可能)
  • ib:数えられる故障を1つまで考慮した機器(ゾーン1,2に使用可能)

上記のようにiaであれば、最も危険度が高いゾーン0においても適用可能です。

本質安全防爆構造について

 

以上が主な防爆構造で、このほか特殊防爆構造、整合指針における樹脂充填防爆構造、非点火防爆構造がありますが割愛します。

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まとめ

  • 日本の防爆構造には主に構造規格整合指針の2種類が存在する。
  • ガス蒸気防爆の危険場所にはゾーン0、ゾーン1、ゾーン2がある。
  • 防爆構造には複数の種類があり、それぞれ適用できる危険場所が異なる。また整合指針と構造規格でも差異がある。

 

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