はじめに
近年、電力供給の安定化と設備の効率的な運用が求められる中で、受変電設備の中でもガス絶縁開閉装置(GIS: Gas Insulated Switchgear)およびキュービクル形ガス絶縁開閉装置(C-GIS: Cubicle-type Gas Insulated Switchgear)の重要性が増しています。特に、スペースの限られた都市部や、環境の影響を受けやすい場所では、耐久性や安全性に優れたGISおよびC-GISが採用されることが多くなっています。
本記事では、GISやC-GISについて学ぼうとする初心者向けに、その基本的な構成要素や設置のポイント、さらに安全性を確保するために必要な定格について解説します。まずは、GISおよびC-GISがどのような設備なのかを理解するところから始めましょう。
1. GISおよびC-GISとは
GISおよびC-GISは、特別高圧受電設備のためのガス絶縁開閉装置で、絶縁媒体としてSF₆ガス(六フッ化硫黄)を使用しています。この絶縁開閉装置は、大きく次の3種類に分類されます。
- 相分離形:各相を独立した容器に収納するタイプで、相間短絡のリスクが低く信頼性が高いものの、設置スペースが大きくなる傾向があります。特に、超高圧系での適用が多く、特別高圧受電設備としては少ないです。
- 三相一括形:3相を一つの円筒形容器に収納し、コンパクトな構造を実現しています。この構造は標準的な受電方式に対応でき、高電圧や大容量の受電設備に適用されることが多いです。
- キュービクル形(C-GIS):角形の容器に機器をユニット化して収納したタイプで、特に中・低容量の受電設備や省スペースが求められる場所に適しています。デザインがシンプルで、外観が環境と調和するように配慮されています。
1.1 GIS(ガス絶縁開閉装置)とは
GIS(ガス絶縁開閉装置)は、特別高圧受電設備において高電圧を安全に管理するための設備です。SF₆ガスを絶縁媒体として使用することで、耐環境性や安全性に優れ、都市部や屋外の限られたスペースでも効率的に設置できます。
GISの内部は、遮断器、断路器、接地開閉器、避雷器、変流器などの機器で構成されており、これらの機器が相互に連携して電力供給の安定化と安全性を確保しています。GISの構造は、相分離形や三相一括形に分類されますが、どちらも限られたスペースに効率よく機器を配置することができます。下記にGISの場合のレイアウト例を示します。
1.2 C-GIS(キュービクル形ガス絶縁開閉装置)とは
C-GIS(キュービクル形ガス絶縁開閉装置)は、GISの一種で、特に省スペース設計が求められる中・低容量の受電設備に最適化されています。C-GISは角形の容器に機器をユニット化して収納し、設置場所や周囲の景観と調和するデザインが特徴です。以下にC-GISのレイアウト例を示します。
2. 構成要素について
GISおよびC-GISは、複数の構成要素から成り立っています。それぞれの役割を理解することで、全体の動作や安全性確保のメカニズムを理解しやすくなります。以下、主要な構成要素について説明します。
遮断器:
異常電流(短絡電流)が発生した際に回路を遮断し、機器の保護や事故の拡大防止を図ります。
断路器:
回路の切り離しを行う装置で、メンテナンスや点検時に使用されます。遮断器と連携して、機器の安全を確保します。
接地開閉器:
断路器によって切り離された回路を接地するための装置で、安全な作業環境を提供するために使われます。
避雷器:
雷や電圧サージが発生した際に異常電圧を吸収し、機器を保護します。
変流器・電圧変成器(CT・VT):
回路電流や電圧を計測し、制御装置に信号を送るための装置です。
3. 標準定格について
GISおよびC-GISの安全かつ安定的な運用を確保するために、各機器には「標準定格」が設定されています。以下、主な定格項目について一つずつ詳しく解説します。
定格電圧
定格電圧は、絶縁開閉装置が正常に動作するための最大電圧範囲を指します。この値は、機器が許容する回路電圧の上限を示し、受電設備が接続される電圧に応じて適切に選定する必要があります。高い電圧に耐えられるほど、より大規模なシステムに対応できます。
定格耐電圧
定格耐電圧は、機器が異常電圧(雷や電圧サージなど)に対して耐えられる能力を示します。この項目は機器の安全性に直結し、絶縁破壊を防ぐための基準となります。定格耐電圧は、雷インパルス耐電圧や工頻耐電圧(商用周波数での耐電圧)などで評価されます。
定格電流
定格電流は、絶縁開閉装置が通常運転中に流せる最大電流値です。回路に流れる電流がこの定格を超えると、機器が過熱や損傷する可能性があるため、負荷電流に応じて適切な値を選定します。今後の負荷増加も見越して余裕を持たせるのが一般的です。
定格周波数
定格周波数は、機器が正常に動作するための商用周波数(50Hzまたは60Hz)です。この周波数に適合した機器を選ぶことで、国内の電力系統と同期し、安定した運転が可能になります。
定格短時間耐電流
定格短時間耐電流は、短絡などの異常時において、短時間(通常1秒または2秒)耐えることができる最大電流値を指します。受電点における遮断器の短絡電流に対応するため、過電流が流れた際に安全に処理できるかどうかの基準です。
定格制御電圧
定格制御電圧は、開閉機器の制御装置を正常に動作させるために必要な電圧です。主に制御回路の操作に使用され、定格電圧の種類に応じて、適切な直流(DC)または交流(AC)の電圧を選びます。
定格操作圧力
定格操作圧力は、開閉機器の操作機構が動作する際に必要な圧力です。例えば、圧縮空気などを使用して機械的な動作を行う場合、この圧力が適正でないと正常に動作しない可能性があります。
定格操作電圧
定格操作電圧は、開閉機器の電気操作装置が動作するために必要な電圧です。この電圧は、操作電流が最大に達した際の端子間電圧として設定され、機器の動作安定性に関わります。
定格ガス圧力
定格ガス圧力は、GIS/C-GIS内に封入されるSF₆ガスの標準圧力で、20℃での封入ガス圧力が基準です。この圧力は絶縁性能に直結し、機器の安全性を維持するために重要です。ガス圧力が低下すると絶縁能力が低下するため、定期的な圧力管理が必要です。
4. VCTおよび変圧器との取り合いについて
VCT(Voltage Current Transformer、電圧・電流変成器)は、主に電力会社から支給される計測装置で、正確な電圧と電流の情報を提供するため、保護・制御システムに不可欠です。
VCTの設置や取り合いについては、電力会社が支給する機器であることから、接続条件や設置場所に関して電力会社との協議が必要です。電力会社の仕様や規定に基づいて設置を行うことが推奨され、取付スペースや保守点検の際の作業性を確保するための計画が重要です。
変圧器との接続方法
GISおよびC-GISと変圧器の接続には、以下の3種類の方法が用いられます。
気中接続:
変圧器とGISを空気中で直接接続する方式です。気中接続はシンプルな構造ですが、絶縁性能を確保するために十分な空間が必要です。
電力ケーブル接続:
電力ケーブルを使用して変圧器とGISを接続する方法です。ケーブルを使用することで、柔軟な配置が可能になり、設置条件に応じた対応がしやすいというメリットがあります。
ガス絶縁直結接続:
GIS内部のガス絶縁環境で直接接続する方法で、最も高い絶縁性能を実現できます。特に高電圧大容量のシステムで多く用いられ、接続部分の気密管理が求められます。
いずれの接続方法を採用する場合でも、接続条件や取合い寸法、保守作業時のアクセス方法などを事前に確認することが求められます。
まとめ
本記事では、GISおよびC-GISについて、基本的な構成から標準定格、さらにVCTや変圧器との取り合いについて幅広く解説しました。GISおよびC-GISは、小型化・安全性・耐環境性に優れた受変電設備として、現代の電力供給システムにおいて欠かせない存在です。
初心者にも理解しやすいように構成しましたが、これらの知識をもとにさらに深い理解を目指し、具体的な適用例や技術的な進化についても関心を持って学んでいただければと思います。GISおよびC-GISの活用は、今後ますます広がると期待されており、さらなる技術革新が進むことで、より効率的で安全な電力供給が可能になるでしょう。
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