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工場の騒音計算(オクターブバンドによる騒音レベルの予測)

騒音を耐える人低圧・制御・FA

プラントや工場を建設する際、稼働時にどれくらい騒音が発生するかを事前に予測する必要があります。騒音値の計算は非常に難しく、今回の記事では詳細は触れません。

ただ騒音値計算には変圧器や発電機などから発せられる騒音データが必要となるため、こういったデータ取得をスムーズに行えるよう基本的な部分をおさえていきたいと思います。

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騒音規制法、自治体の騒音規制値について

騒音については規制や関連法律がいくつか存在しますが、工場や発電プラントが守らなければならない騒音値は騒音規制法に定められています。

こちらのページが対象施設や法令について体系的に理解がしやすいです。

騒音に関する規制と法律のまとめ(規制値、基準値、参照値) | 騒音調査・測定・解析のソーチョー
騒音に関する規制と法律のまとめ(規制値、基準値、参照値)騒音にはさまざまな規制や関連法律がある騒音問題は高度成長期に注目され、その後時代の流れとともに変化してきました。

このように騒音規制法によって守るべき騒音基準値が分かります。

しかしさらに、各自治体がこの基準を満たす形で各々の地域に規制値を設けています。例えば愛知県だと以下になります。

愛知県 騒音規制値(特定工場)

引用先:http://www.city.tokai.aichi.jp/secure/5016/h28koujou.pdf

これが設計時に遵守しなければならない騒音規制値となり、プラントの敷地境界線における騒音値はこれ以下となる必要があります。このように遵守しなければならない騒音規制値は自治体によって異なるため、しっかり確認しておきましょう。

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騒音値の予測計算(ISO9613-2)

守るべき規制値が分かったところで次は設計です。

プラントを建設した後に「騒音値が守れてないじゃないか!」なんてことにならないように、設計段階で発生する騒音値を予測計算し、しかるべき対策を施す必要があります。

実際にこの検討を行うにはソフトウェアを活用するケースが多いでしょう。例えば以下のONO SOKKKIが出している「SoundPLAN」というソフトを例として見ていきましょう。

小野測器 - 環境騒音予測ソフトウェア SoundPLANnoise (サウンドプランノイズ)
道路、鉄道、工場などから発生する騒音がどのように伝搬していくかを予測計算する音響シミュレーションのためのソフトウェア。小野測器は日本総代理店として、日本語仕様、および日本における騒音予測手法の導入、さらにお客様へのコンサルタントも含めた技術サポートを行っています。

私も使用したこと自体はないのですが、こういったソフトがあればかなり簡便に騒音計算や検討が可能です。(ビジュアル的に理解しやすい騒音マップの作製や、防音壁の設計支援など便利な機能が豊富)

ソフトによる防音壁の検討

引用元:https://www.onosokki.co.jp/HP-WK/whats_new/catalogs/products/soundplan_12.pdf

騒音計算にはいくつかの手法が用意されており、中でもプラントや工場においてはISO9613-2という規格の騒音予測計算が一般的に使用されます。

ISO9613-2は「屋外を音が伝搬する際、各種要因(大気の吸収、拡散、地表面、障壁、建築物)による減衰量を計算する」というものです。ようは騒音の音源に対し、距離や大気の条件によってどれくらい騒音値が減衰するかを計算して騒音値を算出するというもので、「騒音の減衰量を知るための手法」ということになります。ざっくりいうと以下のプロセスを経て計算します。

①    騒音の音源周波数特性データを機器ごとを用意

②    音源周波数特性(63Hz~8kHzのオクターブバンドデータ)から減衰量を個別計算

③    最終的に全体の和をとることで等価的な騒音値とする。

実際の騒音音源は複数の音が混じった複合的な音となり、計算する際は分解する必要があります。22Hz~11200Hzまでの周波数帯が範囲となりますが、例えば1Hzごとに音を分けて計算…というのはデータの用意を考えると現実的ではないですよね。

そこでオクターブバンドという周波数グループに分けた音源データを用意し、計算結果の和をとることになりました。

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音源周波数特性(オクターブバンドデータ)

オクターブとは「倍音」という意味になり、ここで言うオクターブバンド「63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz」という周波数で分けたものを指します。また1/3オクターブバンドというものもあり、これはオクターブバンドをさらに1/3刻みの細かさ(63Hz、80Hz、100Hz、125Hz……)で分けたものになります。

音源周波数特性データは、例えば下記のようなデータになります。

騒音データ(オクターブバンド)の例

一番右の騒音レベルは各オクターブバンドの騒音レベルを足し合わせたものになり、仕様書やスペックシートに書かれている機器の騒音値はこの値を指します。

このような音源周波数特性(オクターブバンドデータ)を用意すれば、ISO9613-2の計算手法に沿って、計測地点の騒音値を計算することができます。(実際の騒音値計算には地形情報、建材、大気条件など様々な要素や情報を入力します)

さてここで[dB(A)]という騒音値を示す単位が登場しました。[dB]デシベルといい音の大きさを指しますが、(A)というのは何を指すのか、述べていきます。

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周波数重み付け特性(A特性、C特性、Z特性)について

人間の耳は周波数帯毎に聞こえやすかったり、逆に聞こえにくかったり、など一定の特性が存在します。このため騒音計などで騒音を計測する時にはこういった特性を加味し、補正をする必要があります。

A特性

いわゆる「人の聴覚を模した周波数特性」であり、プラントで騒音を測定する場合はこの周波数重み付け特性Aを使用します。特に断りがない限りは、A特性の音源周波数特性データを機器ごとに取得することになります。

C特性

「大きな音の聴感を近似して作られた特性」になります。以前は音の大きさによってはこの特性が使用されていたようですが、現在ではA特性が一般的です。しかし私が変圧器の音源データについて問い合わせた際は、C特性というメーカー回答があったため注意が必要です。

Z特性

「周波数範囲で平坦な特性を持った特性」になります。人の聴感とは無関係に、あくまで音という物理現象を測定する際に使用します。もっぱら解析装置などで使用する特性のようです。

 

ほかにもB特性、D特性などがあるようですが、現在では使用されていません。

ちなみに先の項の[dB(A)]というのは「A特性でフィルタをかけていますよ」ということを意味しています。とりわけ騒音値計算は人への影響を考慮するために行われるため、A特性の騒音データ(音圧データ)を用いることが普通だと分かると思います。

 

以上で解説を終わります。

騒音値を正確に算出するため、適切な音源データを用意するよう心がけましょう。

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まとめ

  • 工場やプラントが遵守する騒音規制値は、騒音規制法および自治体の公表値を参照する
  • プラントの騒音計測手法としてはISO9631-2の手法が一般的で、計算自体や検討はソフトウェアを使用するケースが多い
  • 騒音値計算には音源となる機器の「音源周波数特性(オクターブバンドデータ)」が必要となる
  • 騒音値には周波数重み付け特性(A特性、C特性、Z特性)が主にあり、A特性が一般的に用いられる
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参考文献

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