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特別高圧変圧器の種類・電圧等級・インピーダンス・冷却方法・騒音について

特別高圧

特別高圧受変電設備における特別高圧変圧器(高圧変圧器)について、初心者向けに基礎知識を解説します。本記事では、変圧器の特徴や構造、冷却方式、劣化防止方法、騒音対策について詳しく説明します。


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1. 油入形、モールド形、ガス形の特徴について

特別高圧受変電設備に用いられる変圧器には、油入形、モールド形、ガス形の3種類があります。それぞれ異なる特徴を持ち、設置場所や用途に応じて選ばれます。東芝の資料によると下記のように電圧等級で区分されています。

特別高圧変圧器_東芝ラインナップ

特別高圧変圧器_東芝ラインナップ

油入形変圧器

油入形変圧器は、絶縁油を使用した冷却方式が採用されています。絶縁油による自然冷却や送風冷却が可能で、冷却効果が高いため、大容量の変圧器でも効率的に熱を処理できます。そのため、屋外設置や大容量が求められる環境で主に使用されます。また、耐久性が高く、安定した電力供給が可能なため、長期的な信頼性が求められる設備に適しています。しかし、火災のリスクがあるため、消防対策が求められる場合があります。

モールド形変圧器

モールド形変圧器は、樹脂によって絶縁を行う乾式の変圧器で、防火性能が高く、ビルや地下施設などで多く採用されています。特に密閉構造により耐火性があり、油漏れや火災リスクが低いため、屋内設置に適しています。モールド形は基本的にメンテナンスが少なく済むことも特徴で、メンテナンス頻度が限られる設置場所や、周囲環境の安全性を重視する場合に選択されます。ただし、冷却性能は油入形より劣るため、大容量の対応には限界があります。

ガス形変圧器

ガス絶縁変圧器は、絶縁媒体としてSF₆ガスを使用することで高い絶縁性能と不燃性を実現した変圧器です。SF₆ガスはタンク内に一定圧で封入されており、圧力メーターで絶縁性能を管理します。絶縁油を使用しないため、火災リスクがなく、周囲の防火設備を軽減できる利点があります。また、無負荷損を低減する高性能方向性珪素鋼板の採用や冷却効率の向上により、低損失・高効率を実現。タンクは完全密封構造で外気と遮断されているため、湿気や塵埃による劣化がなく、長期にわたって高い品質を維持できる長寿命設計です。

 

上記3種類の中で最も採用されるのが油入形変圧器で、これは変圧器本体がコンパクトになることに加えて安価であることが主な理由です。一方、消火設備や防油堤などを付帯しなければならないケースもあるため、そこは考慮が必要です。屋外であれば一般に油入形が採用されます。

一方屋内の場合、上記のような付帯設備の制限がないことからガス形とモールド形が検討されます。特に66kV以上の大容量となるとガス形、それ以下の小容量であればモールド形が採用されるケースが多いです。

また油入形変圧器、モールド形変圧器のインピーダンス区分は下記を参照してください。

変圧器のインピーダンス

変圧器のインピーダンス

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2. 三相変圧器の結線と使い分け

三相変圧器の結線方法には「Δ結線」と「Y結線」という2つの主要な方式があり、特性や用途に応じて使い分けが行われています。結線方式は、変圧器の性能や設置場所での用途に大きく影響します。

Δ結線は、3つの相を三角形に結線する方法で、電圧変動が少なく、過負荷に対する耐性があるため、安定した電力供給が必要な工場や産業施設で多く使用されます。また、Δ結線は負荷がバランスしていない場合でも安定して電力を供給できる特性があり、大電流が流れる環境に適しています。

一方、Y結線は、3つの相を星型(Y字型)に結線し、中性点を設けることで、単相電源の取り出しが可能です。この結線方法は、低電圧の需要が多い一般的な商業ビルやオフィスビルで採用されることが多いです。Y結線は電圧を低く抑えつつも効率よく電力を供給するため、長距離送電に適しています。また、中性点が存在することで、保護リレーの設置や接地が容易になり、設備全体の安全性が向上します。

各結線方式にはそれぞれの利点があり、設置環境や負荷条件に応じて最適な結線方式を選ぶことが重要です。

三相変圧器の結線

三相変圧器の結線


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3. 負荷時タップ切り替え装置と無負荷時タップ切り替え装置について

変圧器のタップ切り替え装置には、負荷時タップ切り替え装置無負荷時タップ切り替え装置の2種類があります。それぞれ異なる役割と機能を持ち、適用される状況も異なります。

負荷時タップ切り替え装置は、負荷をかけたままタップを切り替えて電圧を調整する装置で、需要の変動が大きい場所で安定した電圧供給を可能にします。この装置は、運転中にリアルタイムで電圧を調整できるため、供給電圧の安定性を保ちながら効率的な運用が可能です。例えば、季節や時間帯によって電力需要が変動する施設では、負荷時タップ切り替え装置を用いることで、瞬時に電圧を調整し、安定した電力供給を維持します。

以下に、一般的なタップ切り替え範囲(±10%)の例を示します。タップ点数は13または17が標準で、例えば66kVの定格電圧で各タップ段階の値は以下の通りです。

  • タップ1:59.4kV

  • タップ2:60.6kV

  • タップ3:61.8kV

  • タップ4:63.0kV

  • タップ5:64.2kV

  • タップ6:65.4kV

  • タップ7(定格):66.0kV

  • タップ8:67.2kV

  • タップ9:68.4kV

  • タップ10:69.6kV

  • タップ11:70.8kV

  • タップ12:72.0kV

  • タップ13:73.2kV

これに対し、無負荷時タップ切り替え装置は、電源を切った状態(無負荷状態)でのみタップの切り替えが可能です。無負荷時タップ切り替え装置は、設備の稼働前に一定の電圧で運用する場合に設定されることが一般的です。例えば、長期間安定した電圧での運用が想定される施設では、初期設定時に無負荷時タップ切り替え装置で電圧を調整し、以降はその設定を保持して運用します。負荷変動が少なく、頻繁な調整が不要な場所での利用が効果的です。

負荷時タップ切り替え装置と無負荷時タップ切り替え装置は、用途や設置場所に応じて適切に選ばれ、電力供給の安定性と効率を向上させます。


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4. 各種冷却方式と表示記号例

変圧器の冷却方式には、油入自冷、油入風冷、送油冷却、ガス冷却などがあり、それぞれの方式には異なる特徴があります。

  • 油入自冷(ONAN):自然冷却方式で、変圧器の内部に絶縁油を満たし、自然対流で冷却します。小型から中型の変圧器に使用され、メンテナンスが比較的簡単です。

  • 油入風冷(ONAF):自然冷却と強制風冷を併用する方式で、油の自然対流に加えてファンで冷却効果を高めます。中型から大型の変圧器に使用され、冷却性能が向上します。

  • 送油水冷(OFWF):冷却器内に絶縁油を循環させ、さらに水で冷却する方式です。大容量の変圧器に使用され、効率的な冷却が可能ですが、設置や運用コストが高くなります。

  • ガス冷却(GNAN, GFAFなど):絶縁ガス(主にSF6ガス)を利用した冷却方式で、火災リスクが低く、ビル内設置にも適しています。高い絶縁性能が必要な場所で採用されます。

特別高圧変圧器_ガス絶縁形_冷却方式

特別高圧変圧器_ガス絶縁形_冷却方式

各種冷却方式および表示記号の例

各種冷却方式および表示記号の例

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5. 油劣化防止方法の分類

変圧器に封入されている絶縁油は、温度の変化や負荷の変動により膨張や収縮を繰り返します。このため、変圧器は大気中の湿気や酸素にさらされると、絶縁油が酸化しやすくなります。絶縁油の劣化を防ぐためには、適切な対策が必要です。

開放形では、変圧器が直接大気と接触するため、劣化が進みやすくなります。対策としてシリカゲルブリーザを用いることが一般的です。密封形では、空気や窒素を封入することで絶縁油の酸化を防ぎます。また、無圧密封形のフィーディングタンクやゴム膜方式は、油の体積変化に対応しながら大気との接触を防ぎ、メンテナンスが容易であることから広く利用されています。

特別高圧変圧器_油入形変圧器

特別高圧変圧器_油入形変圧器

油劣化防止方法の分類

油劣化防止方法の分類


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6. 変圧器の騒音について

変圧器の騒音は、特に住宅地などの環境で重要な問題です。大容量の変圧器ほど騒音が大きくなりやすく、適切な対策が求められます。騒音レベルはJEMやJISで規定されており、冷却方式や定格容量に応じた基準が設定されています。

以下は、ある自治体における敷地境界線の騒音規制値の例です。

  • 昼間:60dB以下

  • 夜間:50dB以下

また、乾式変圧器や油入変圧器においては、それぞれの冷却方式に応じた騒音基準が設けられており、騒音が基準値を超えないような設計が求められます。

乾式変圧器の騒音レベル基準値

乾式変圧器の騒音レベル基準値

油入およびガス入変圧器の騒音レベル基準値(抜粋)

油入およびガス入変圧器の騒音レベル基準値(抜粋)

「配電用6kVモールド変圧器」の騒音レベル基準値

「配電用6kVモールド変圧器」の騒音レベル基準値

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まとめ

特別高圧受変電設備と特別高圧変圧器の基礎知識を理解することは、適切な選定と運用において不可欠です。冷却方式や結線方法、タップ切り替え装置、油劣化防止対策、騒音対策など、各項目についての理解を深めることで、安全で効率的な電力供給が可能となります。これからも設備の特性や用途に応じた最適な選定と管理を行うことが重要です。

 

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