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【PH計】PH計の原理を解説!ガラス電極・比較電極・KCL水溶液無補給形の仕組みについて

PH計イラスト 計装
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PH計とは?

pH計とは、液体の酸性度やアルカリ度を測定するための装置です。pH値は、水素イオンの濃度を示す指標であり、0から14の範囲で表されます。値が7に近ければ中性、それより低ければ酸性、高ければアルカリ性と判断されます。この測定は、化学実験や水質管理、食品製造、農業など、さまざまな分野で非常に重要です。

例えば、水道水やプールの水質管理では、適切なpH値を維持することが、安全で快適な環境を保つために不可欠です。また、農業では、土壌のpH値が作物の成長に直接影響を与えるため、pH計を使用して土壌の酸性度を調整することが求められます。さらに、食品製造業においても、発酵食品や飲料の品質管理にはpH計が欠かせません。

pH計は、精密な科学機器でありながらも、使用方法は比較的簡単で、多くの現場で活躍しています。この記事では、pH計の基本的な仕組みから、その応用や構造に至るまで、初心者にもわかりやすく解説していきます。これからpH計を利用しようとしている方や、既に使用しているが理解を深めたい方にとって、有益な情報を提供できれば幸いです。

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PH計の原理(基本編)

pH計の基本原理は、溶液中の水素イオン(H⁺)の濃度を測定することに基づいています。原理としては、非常に薄いガラス膜を通して2つの異なる溶液が接触すると、電位差が生じます。この電位差は、溶液中の水素イオンの濃度によって変化し、その変化がpH値として表示されます。

下記はそれを概念として表現したイラストになります。

PH計の原理(二種の溶液を薄いガラス膜で隔てて接触させることで電位差が発生する)

膜の両側に異なる水素イオン濃度が存在することになり、この違いが原因で、ガラス膜の表面に電荷が発生し、その結果、膜を挟んで電位差が生じます。この電位差は、Nernst(ネルンスト)方程式に従って、水素イオンの濃度に依存して変化します。

pH計はこの電位差を検出し、適切に計算することで溶液のpH値を測定します。この記事では詳しい計算式などは紹介しませんが、イラストのように異なる溶液をガラス膜を挟んで接触させると、pH値の違いの分だけ電位差が発生する、ということさえ分かっていれば大丈夫です。

このように、pH計の基本原理は、ガラス電極を介した電位差の測定に基づいており、水溶液中の水素イオン濃度を正確に把握するための非常に有効な手段です。こういった原理ですから、発生する電位差を正確に測定することが重要だと分かると思います。次のセクションでは、この基本原理がどのようにして応用されているか、さらに詳しく掘り下げていきます。

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PH計の原理(応用編)

pH計の基本原理であるガラス電極を用いた電位差の測定は、多くの場面で応用されています。ここでは、特にガラス電極式pH計の構成とその応用について詳しく説明します。

ガラス電極の構成

ガラス電極式pH計は、いくつかの重要な要素から構成されています。それぞれの要素がどのように機能し、全体としてpH測定を可能にするかを理解することが、pH計を正しく使いこなすためには不可欠です。

  1. ガラス電極
    • ガラス電極は、pH計の中心的な役割を果たします。ガラス膜は特別な材質で作られており、非常に薄い構造を持っています。このガラス膜が水溶液中の水素イオンに反応し、電位差を生じさせます。ガラス膜の内側には、通常pH7のバッファ溶液が封入されており、これが基準となります。
  2. 比較電極(参照電極)
    • 比較電極(参照電極)は、ガラス電極と対を成し、安定した電位を提供する役割を持っています。比較電極は通常、塩化銀(AgCl)を含んだ塩化カリウム(KCl)水溶液に浸された銀電極で構成されています。この電極は、測定対象の溶液に関係なく、常に一定の電位を保持するよう設計されています。
  3. 飽和塩化カリウム(KCl)水溶液
    • ガラス電極と参照電極の間を満たしているのが飽和KCl水溶液です。この溶液は、電位差を安定して測定するために必要不可欠です。また、KCl溶液は液絡部を介して外部の測定溶液と電気的に接続されており、これが電気回路を完成させる役割を果たします。
  4. 液絡部
    • 液絡部は、参照電極のKCl水溶液と外部の測定溶液を電気的に接続する部分です。この部分を通じて、内部のKCl溶液と測定溶液が接触し、測定に必要な回路が完成します。イラストのように「内部液⇒測定対象液体⇒ガラス膜外面」のルートで電気的に接続される形です。液絡部の設計は、電位差の安定性と測定精度に大きな影響を与えるため、非常に重要です。

下記はpH系の原理についてイラストでまとめたものになります。

PH計の原理・構造について説明

pH計の応用

ガラス電極式pH計は、その構造を利用して多くの応用が可能です。例えば、水質管理では、ガラス電極が水溶液中のpHを正確に測定することで、適切な水質調整が行えます。食品業界では、発酵プロセスの進行をリアルタイムで監視するためにpH計が使用され、製品の品質を一定に保つことができます。

また、pH計は医療分野でも応用されています。血液や体液のpHを測定することで、患者の健康状態を把握し、適切な治療を行うための指標とすることができます。

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PH計検出部の実際の構造について

pH計は、ガラス電極と参照電極(比較電極)を中心にして構成されていますが、その性能や信頼性は、検出部の設計に大きく依存します。ここでは、実際に市場で利用されているpH計の検出部の構造について、代表的なメーカーの製品を例に解説します。

ガラス電極の構造

ガラス電極は、非常に薄い特殊ガラスで作られたガラス膜が特徴です。pH感応性が高く、水素イオン濃度に応じて電位差を生じます。

ガラス電極の設計は、測定の精度に直結するため、各メーカーは独自の技術を駆使して高感度で耐久性のある電極を開発しています。一部の高性能なガラス電極は、特殊な処理が施されており、pH測定の応答速度や精度が向上しています。

参照電極の構造

参照電極(比較電極)は、ガラス電極と対になるもう一つの重要な要素です。この電極は、安定した電位を提供するために設計されています。参照電極は、外部の溶液との接触によって生じる電位変動に対して非常に安定しているため、信頼性の高いpH測定が可能になります。

一部の製品では、参照電極の構造に工夫が施され、特定の環境や測定条件に合わせて性能を最適化しています。たとえば、汚れや沈殿物が付きやすい環境向けに、セルフクリーニング機能やメンテナンスが容易な設計が採用されているモデルもあります。

液絡部の構造

液絡部は、参照電極のKCl水溶液と外部の測定溶液を電気的に接続する重要な部分です。液絡部を通じて内部のKCl溶液がわずかに漏れ出し、外部の溶液と接触することで、安定した電位差が測定されます。この部分の設計が不十分であると、測定にノイズが入ったり、電極の寿命が短くなったりする可能性があります。

メーカーによっては、液絡部を耐久性の高い素材で覆ったり、詰まりを防止するための特殊な構造を採用していることがあります。また、液絡部の位置やサイズを最適化することで、様々な溶液のpHを正確に測定できるように設計されています。

市場に出回っているpH計の事例

例えば、あるメーカーのpH計では、ガラス電極の耐久性を向上させるために、特殊なコーティングが施されているモデルがあります。このコーティングにより、電極の汚れや傷が付きにくく、長期間にわたって安定したpH測定が可能になります。また、液絡部が交換可能な構造になっているため、メンテナンスが容易で、使用環境に応じて最適な液絡部を選択できるモデルも存在します。

他のメーカーでは、ガラス電極と参照電極を一体化させた「複合電極」を提供しているケースがあります。この構造は、pH計のサイズをコンパクトにし、携帯型のpH計として利用する際に非常に便利です。また、複合電極は取り扱いが簡単で、迅速な測定が求められる現場で重宝されています。

下記はYOKOGAWAが出しているpH計の一例です。

PH計検出部の実際の構造

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KCl補給形、KCl無補給形について

pH計には、KCl(塩化カリウム)溶液の補給が必要なタイプと、補給が不要なタイプがあります。それぞれに特徴があり、使用目的や環境に応じて最適なタイプを選ぶことが重要です。このセクションでは、KCl補給形とKCl無補給形のpH計について、その構造、メリット・デメリットを詳しく解説します。

KCl補給形のpH計

KCl補給形のpH計は、参照電極にKCl溶液を補充することで、長期にわたり安定した測定を可能にするタイプのpH計です。このタイプでは、参照電極内のKCl溶液が時間とともに消耗していくため、定期的にKCl溶液を補充する必要があります。参照電極内のKCl溶液は、液絡部を通じて少しずつ外部に漏れ出し、その過程で安定した電位が維持されます。

メリット

  • 高い測定精度: 定期的にKCl溶液を補給することで、参照電極の電位が常に安定し、測定精度が維持されます。特に、長期間の使用や過酷な測定環境で、精度を保つことが可能です。
  • 長寿命: 補給形のpH計は、適切にメンテナンスを行うことで、長期間にわたって使用できるため、コストパフォーマンスが高いです。
  • 幅広い応用: KCl溶液の濃度を調整できるため、様々なpH測定条件に対応可能で、広範な用途に適しています。

デメリット

  • メンテナンスが必要: 定期的にKCl溶液を補給する必要があり、メンテナンスに手間がかかります。特に、測定頻度が高い場合は、メンテナンスの頻度も増えます。
  • 取り扱いの難しさ: KCl溶液の補給や電極の洗浄など、一定のスキルが求められるため、初心者には扱いが難しい場合があります。

KCl無補給形のpH計

KCl無補給形のpH計は、参照電極内のKCl溶液が密閉されており、通常の使用において補給が不要なタイプです。このタイプは、電極自体が消耗品として設計されており、一定期間使用した後に交換することで、pH計としての機能を維持します。

メリット

  • メンテナンスが簡単: KCl溶液の補給が不要なため、メンテナンスの手間が大幅に削減されます。定期的な補給や細かな調整が必要ないため、初心者や忙しい現場でも手軽に使用できます。
  • 使いやすさ: 一体型のシンプルな構造で、取り扱いが簡単です。測定が必要な時にすぐに使用できる手軽さが魅力です。
  • コスト削減: 補給の手間がないため、初期コストはやや高くても、運用コストは低く抑えられます。特に、短期間で多くの測定を行う場合に適しています。

デメリット

  • 使用寿命が限られる: 電極が消耗品であるため、一定期間ごとに交換が必要です。長期間の使用では、交換コストがかかる可能性があります。
  • 測定精度の低下: 使用環境や測定条件によっては、補給形と比べて測定精度がやや劣る場合があります。特に、高精度が求められる場面では注意が必要です。
  • 特定の用途に限定: 一部の厳しい測定条件下では、補給形の方が適している場合があり、無補給形では対応できない場合があります。

下記はKCL補給形とKCL無補給形の構造をイラストでまとめたものです。またKCL無補給形についてはHORIBAの資料が分かりやすかったので転載しております。KCL補給形、KCL無補給形の原理・構造

HORIBA製KCL無補給形pH計の説明

どちらを選ぶべきか?

KCl補給形とKCl無補給形のどちらを選ぶかは、使用環境や求められる精度、メンテナンスにかけられる時間やコストに依存します。例えば、高精度での測定が求められる研究や製造現場ではKCl補給形が適していますが、簡便さや手軽さが求められる現場や教育用にはKCl無補給形が好まれることが多いです。

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まとめ

  • pH計は、ガラス電極参照電極を用いて水素イオン濃度に基づく電位差を測定し、正確なpH値を提供する。
  • pH計の性能や信頼性は、ガラス電極や参照電極、液絡部などの構造に依存し、各メーカーが独自の技術で最適化している。
  • KCl補給形のpH計は高い測定精度と長寿命が特徴であるが、定期的なメンテナンスが必要。一方、KCl無補給形は手軽でメンテナンスが簡単だが、使用寿命が限られる。
  • pH計の選択は、使用環境や目的に応じて、KCl補給形とKCl無補給形のメリット・デメリットを比較して決定することが重要である。
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参考文献など

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