概要
調節弁(コントロールバルブ)とは、流量・圧力・温度・液位など工場やプラントで必要となる物理量(プロセス量)を制御するための操作機器です。
配管やタンクに存在する様々な液体は、圧力計やレベル計によってその物理量を測定しています。
当然測定した以上、次はこのプロセス量をコントロールする必要があると思います。
調節弁は通常のバルブのような開と閉という二通りの状態だけでなく、例えば20%だけ弁を開いてほしい、もしくは60%だけ閉として欲しい、という断続的な変化をつけることが可能となるバルブです。
下のイラストを参考にしてみてください。
調節弁はイラストで説明している通り、調節計などと一緒に組み合わせて使用するケースが多く、最近はPLCから直接4~20mAの指令を出すことも多いです。
例では調節計は配管に取り付けた流量計から「液体の流量」を計測し、設定値と計測値の偏差を考慮して、調節弁へと開度を指令します。
調節計が頭脳なら、調節弁は手足のような存在ということになります。
※調節計の原理については下記の記事をご参照ください。
調節弁(コントロールバルブ)は調節計の演算結果に基づき、正確に弁体の開度を維持・修正する役割を担っているんですね。
調節弁の構成
調節弁自体はPLCや調節計からの信号を下に、忠実に開度を変える機器であることを前述しました。
では実際にどういった構成なのか、イラストを見てみましょう。
調節弁は主に「ポジショナ」と「駆動部」の二つで構成されています。
ポジショナ
外部からの開度指令を受信し、信号と開度が一致するように制御する機器になります。
動作機構としては電空式と空空式の二種類が一般的です。
電空式:電流信号(DC4~20mA)の信号を下に、エアーの力で0~100%の開度に反映。
空空式:空気信号(20~100kPa)の信号を下に、エアーの力で0~100%の開度に反映。
ようは開度指令が電流かエアーかの違いになります。
駆動部
駆動部はポジショナと連動し、実際に液体の流れている弁体部を駆動させる機器になります。
ポジショナと駆動部はフィードバックレバーで接続されており、このレバーによって弁体が上や下に上げ下げされ、流体の通り道を大きくしたり小さくしたり……という動作を行うんですね。
弁体にはグローブ弁という形状が汎用的に使用されますが、そのほかプロセスによってバタフライ弁やゲート弁などが適用されるケースもあるようです。
以上二点が調節弁のオーソドックスな構成になります。
化学プラントなどの危険物エリアでは、エアーを駆動源とした方が安全であり、イラストのようなエアー駆動となる調節弁が多いです。その場合、駆動用エアーには140~280kPa程度の空気圧が使用されます。
調節弁のインテリジェント化
ここまでで調節弁の基本的な機能・構成については述べました。
しかし近年のモデルは本体のインテリジェント化が進み、HART通信などに対応するスマートバルブポジショナというモノが生まれています。
※HART通信については以下の記事をご参照ください。
HART通信や横河のBRAIN通信は、主に二線式伝送方式というDC4~20mAのループ回路に適用される通信規格です。
ディジタル信号を4~20mAのアナログ信号に重畳させることで、PCやコミュニケータ⇔調節弁で通信を行い、本体のセットアップや調整が可能となります。
また調節弁自体が故障診断機能を持ち合わせており、これにより障害が起きた日時、内容、対処法までをすぐに確認することも出来ます。
他にもパラメータのバックアップが簡単にCSVやhtml形式で保存できるため、保全や更新おいても利用できます。
相当便利なので、活用しない手はありませんよ!
まとめ
- 調節弁は計測したプロセス量の制御に用いる操作機器である。
- 「ポジショナ」と「駆動部」の大きく二つで構成される
- 近年はスマートバルブポジショナなど、本体のインテリジェント化が進んだモデルがある。
参考文献・サイト
- 川村貞夫/石川洋次郎『工業計測と制御の基礎―メーカーの技術者が書いたやさしく計装がわかる 工業計測と制御の基礎 第6版』工業技術社,2016年
- 株式会社エム・システム技研『調節弁の基礎知識(1)』 https://www.m-system.co.jp/mstoday/plan/mame/2000-2001/0005/index.html
- アズビル株式会社『スマート・バルブ・ポジショナ』 https://www.azbil.com/jp/product/factory/factory-product/control-valve-actuator/smart-valve-positioner/downloads.html
- Tech Factory『スマートバルブの機能とHART通信の原理』 https://techfactory.itmedia.co.jp/tf/articles/1903/29/news008.html
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